「裁判官」も「捜査官」も”ロシア政府”には逆らえない…違法逮捕された女性記者が見た連邦刑執行庁の「本当の顔」
「NO WAR 戦争をやめろ、プロパガンダを信じるな」...ウクライナ戦争勃発後モスクワの政府系テレビ局のニュース番組に乱入し、反戦ポスターを掲げたロシア人女性、マリーナ・オフシャンニコワ。その日を境に彼女はロシア当局に徹底的に追い回され、近親者を含む国内多数派からの糾弾の対象となり、危険と隣り合わせの中ジャーナリズムの戦いに身を投じることになった。 【写真】習近平の第一夫人「彭麗媛」(ポン・リーユアン)の美貌とファッション ロシアを代表するテレビ局のニュースディレクターとして何不自由ない生活を送っていた彼女が、人生の全てを投げ出して抗議行動に走った理由は一体何だったのか。 長年政府系メディアでプロパガンダに加担せざるを得なかったオフシャンニコワが目の当たりにしてきたロシアメディアの「リアル」と、決死の国外脱出へ至るその後の戦いを、『2022年のモスクワで、反戦を訴える』(マリーナ・オフシャンニコワ著)より抜粋してお届けする。 『2022年のモスクワで、反戦を訴える』連載第41回 『母と息子に見捨てられ、足首には「発信機」…プーチンに逆らった女性記者が陥った悲惨すぎる末路』より続く
衝撃の言葉
数日後、わたしは取調委員会の訊問に呼ばれた。連邦刑執行庁のクルマが迎えに来た。わずかな間でも閉じ込められていた家から出ることができたので、道の両側を眺めるのは楽しかった。 「わたしみたいな監視対象はたくさんいるんですか?」 「あの政治的条文が適用されたのはあなたが初めてです」 連邦刑執行庁の査察官が言った。 「普通、自宅軟禁になるのは詐欺や麻薬中毒です。ほら、ここのアパートには」と査察官はグレーのアパートを指差した。 「自動車泥棒のグループを組織した男がいました。こっちには」と査察官は隣の5階建てのアパートのほうに手を振った。 「家庭のいざこざで夫をナイフで刺した女がいました」 わたしと話をしていた査察官は、眼をそらすと、わたしの記憶にずっと突き刺さる言葉を静かに発した。 「なにしろ、心配することはありません、マリーナさん。わたしたちは皆、あなたに好感をもっていますし、支持しています」