「音に神経質すぎて生きづらい。改善法は?」吉川めいさんのお悩み相談室
② 五感には得意・不得意がある
①で挙げたフォーカスの点も踏まえ、私が瞑想やマインドフルネスのプログラムで時折活用する五感についての認識を深めるエクササイズをやってみましょう。読者の皆さんも質問を読んだら目を閉じて想像し、一緒にやってみてください。 まず、あなたが引っ越しを考えているとしましょう。大切な住まいを決める時、間取り図を見て条件的にいいな、と思ったお部屋を初めて内覧しに行きます。 そっと扉を開け、その部屋に一歩踏み入れた時。あなたが真っ先に受け取る印象は、次のうちどれでしょう? 【一緒にイメージしてやってみてください】 1.光と影の様子 2.うっすら漂う部屋の匂い 3.部屋の中で聞こえる物音や騒音 4.全般的な空間の雰囲気や空気感 良かったら、パッと入ってくるもの(一番目)とその次(二番目)のものに印をつけましょう。 聴覚がとても敏感だという 相談者さんは、3番の音が優先的に入ってくるのではないかと思います。音の次に自分が注目しやすい感覚は何だかわかりますか? 私は、4の雰囲気や空気感といった、目には見えないけれど肌で感じることのできるものが最も敏感なポイントです。次に、3の聴覚が気になります。 このエクササイズの4つの選択肢は、口に物を入れないとわからない「味覚」以外の五感を表しています。このような質問を検討すると、人は五つの感覚すべてを均等にキャッチしていないということが分かるでしょう。どの感覚が得意で、どれが比較的苦手かには、実は大幅な個人差があるのです。 自分の中でどれに最も敏感か(相談者さんの場合の聴覚や私にとっての触覚)には生まれながらに持っているものがありますから、それを変えようとすることは自分にとって自然な状態と反してしまい難しいでしょう。 しかし、①で挙げたフォーカスの向け方について考慮すると、重心のかけ方を右足から左足に変えてみるように、意識の注意力を向ける比重について舵を握り、そこをシフトすることは今すぐできることなのです。 この時、あなたにとって3番手や4番手だった比較的苦手なところへ変えようとするのではなく、2番目に得意だった五感に注目してみることをおすすめします。それも不快な場合は、他の感覚にシフトするのでも良いでしょう。また、シフトすることが難しい場合は、レンズを思いっきり広角に開くように、思いっきり意識をバックさせて、自分の今いる環境や心持ち。そして時の一コマについても遠目で見るように、意識のフォーカスを一点集中(音ばかりが気になる)から「全体を認知する」に変えてみることは非常に有効な知恵です。 私の場合なら、肌感覚が合わず、心地いいと感じられない空間においては、少しでも和める音はないか、聴覚の方へ意識をシフトしてみるということになります。 実はこれって簡単そうに聞こえて、妙に不慣れに感じることがあるのではないかと思います。人って本当に癖のある生き物で、耳ばかりを気にすることに慣れている人にとって、その注意力を嗅覚にシフトしようとすることは、まったく親しみのない自分にならないといけないことでもあるのです。 食べたくないものを食べないように口を閉じたり、目を閉じたりすることはできるけど、耳や鼻や肌を「閉じる」ことはできません。敏感な方にとっては、これらの五感から入ってくる情報に襲われるように感じられることもあるでしょう。そんな時、もちろんできる限り心地よく過ごせるように、あなたの耳や肌に合った環境を選んでいくことは大切だと私は思います。ですが、どうしようもならない時には、こうして自分が舵を握れることについて選び直すことで、少しでも改善のヒントになったら嬉しいです。