今年の石破外交本格スタート 対中国でASEAN連携強化は必須 本丸は「対トランプ氏」
【クアラルンプール=大島悠亮】石破茂首相は10日、訪問先のマレーシアでアンワル首相と会談し、今年の外交を本格的にスタートさせた。経済的、軍事的威圧を強める中国に対処するには、マレーシアなど東南アジア諸国連合(ASEAN)との連携強化が欠かせない。ただ、最優先課題はトランプ次期米大統領との向き合い方だ。今後はトランプ氏の「ディール(交渉)外交」に対する首相の外交手腕が試される。 ■米の関心引き付ける必要 「複雑さと不透明さを増す新たな年の始まりだ。日本外交にとってASEANとの連携強化は、最優先課題の一つだ」。首相はアンワル氏との首脳会談後の共同発表で、マレーシア訪問の意義をこう強調した。 両首脳は中国の海洋進出を念頭に「法の支配」の重要性についても認識を共有した。マレーシアは次の訪問先であるインドネシアとともに、経済や外交で存在感を高めるグローバルサウス(GS、南半球を中心とする新興・途上国)の一員でもある。日本政府は今回の外遊をきっかけにASEANやGSとの協力強化を図る考えだ。 20日に米大統領に就任するトランプ氏は、東南アジア情勢にあまり関心がないとされる。南シナ海で中国が覇権主義的活動を強める中、この地域で日本が米国の代わりに存在感を示しつつ、同盟国である米国を東南アジアに引き付ける狙いも今回のマレーシアとインドネシア訪問の隠れた狙いの一つだ。首相はアンワル氏との会談でも「米国のこの地域への建設的な関与が米国自身の国益にかなうことだ」と言及した。 ■トランプ氏と関係構築困難か 北朝鮮とロシアが軍事協力を進めるなど、日本を取り巻く外交・安全保障上の課題は深刻さを増す。だが、最大の焦点である首相とトランプ氏の会談の日程はまだ固まっていない。トランプ氏が大統領選に勝利した際の電話会談は約5分で終了した。首相が安倍晋三元首相のようにトランプ氏と強固な関係を築くのは難しいとの見方もある。 一方、中国はトランプ氏を警戒し、査証(ビザ)発給緩和などで日本との関係改善を図る動きを見せる。ただ、昨年8月の中国軍機による領空侵犯や中国国内での日本人拘束を受けた中国への不信は拭えず、両国間に横たわる溝は深い。
近年、急速に関係改善が進んだ韓国は、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の「非常戒厳」宣布で深刻な混乱が続く。トランプ氏が多国間連携に後ろ向きとされる中で、北朝鮮抑止のための日米韓協力にも不確定要素が出てきている。不透明な状況をどう打開するのか。首相には積極的で戦略的な外交が求められる。