斎藤知事「適切な対応」繰り返す 識者は県の対応問題視 百条委
兵庫県の斎藤元彦知事がパワーハラスメントなどの疑惑を文書で告発された問題で、兵庫県議会の調査特別委員会(百条委)は25日、総括質疑を行い、斎藤氏が最終の証人尋問に臨んだ。委員らは文書を作成した元県西播磨県民局長(7月に死亡)の懲戒処分や、文書を公益通報として取り扱わなかった点について追及したが、斎藤氏は「適切な対応だった」と従来の主張を繰り返した。 【写真特集】斎藤知事、最後の証人尋問での表情 ◇県幹部の証言を改めて否定 また、元局長の懲戒処分を巡る部下の証言との食い違いについても、平行線だった。10月の証人尋問では、井ノ本知明前総務部長が「公益通報の調査結果を待つよう(斎藤氏に)進言し、了解を得た」と証言。その後、斎藤氏から「風向きを変えたい」と告げられ、処分の前倒しを指示として受け取ったと説明していた。 斎藤氏は25日、改めて「風向きを変えたいというような発言をしたことは全くない。(公益通報の調査結果を待つことを)了承したり、結果を待たずにやれと言ったりしたことは記憶としてない」と否定。第三者委員会による調査を進言したとの他の幹部の証言に対しても、「人事当局が内部調査するのが適切だという進言を受けたというのが私の認識だ」と述べた。 元局長は3月中旬、斎藤氏のパワハラなど県政に関する「七つの疑惑」を文書の形で、報道機関などに匿名で送付した。斎藤氏は同21日、告発者の特定などを県幹部に指示。同27日の記者会見では、文書を「うそ八百」と非難した。元局長は4月4日、告発文書とほぼ同じ内容を県の公益通報窓口に通報。県は5月7日、文書は「核心的な部分が事実でなく、誹謗(ひぼう)中傷にあたる」と認定し、元局長を停職3カ月の懲戒処分にした。 ◇パワハラ疑惑への認識問われ 25日は、職員へのパワハラ疑惑に対し、知事の認識を問う場面もあった。斎藤氏は「厳しく注意、指導することはあったが、業務上必要な範囲で社会通念上の度を越えて暴行罪に該当するようなことはしていない」と主張。一方で、「風通しの良い環境作りをしたい。自分自身の言動についてもしっかり対応していきたい」とも述べた。 告発文書の取り扱いについても、斎藤氏は改めて対応は適切だったと強調した。「(3月に)文書を把握した時、真実でないことが書かれており、誹謗中傷性が高いと認識した。元局長も(片山安孝元副知事の聴取に)『うわさ話を集めた』と話しており、公益通報者保護の要件に該当しないと判断した」と述べ、文書には真実相当性がないという認識は現在も変わらないとした。 25日は、片山氏も証人尋問を受けた。片山氏は3月に元局長の公用パソコンを調べた際、その内容から「クーデター(の意図があった)と解釈した。不正な目的があり、(公益通報の)問題外だと認識した」と語った。 ◇元局長の文書「不正」か「公益通報」か 公益通報者保護法は、不正の利益を得たり、他人に損害を与えたりするなど「不正の目的」がある場合は公益通報の要件を満たさないと定める。しかし、3月末で退職予定だった元局長は文書作成の目的について、報道機関宛ての文書で「頑張って働いている職員のみなさんの将来を思っての行動」と説明していた。 この日、証人尋問を前に参考人招致された公益通報に詳しい結城大輔弁護士は、真実相当性は公益通報に当たるか否かの判断要件にはなっていないと指摘。その上で、「何の根拠もなく臆測で誰かをおとしめようとしているのであれば不正の目的となりうるが、県を良くするためだとすると、そうは言えないのではないか」と指摘、県の対応を問題視した。 斎藤氏は百条委終了後、報道陣の取材に応じ、「公益通報の問題もパワハラの認定も、最終的には司法の場での判断になると思う」と述べた。 百条委は来年1月27日までに素案をまとめ、2月にも報告書を公表する。【大野航太郎、山田麻未、栗田亨、長沼辰哉】