[クラシック回顧2024]音楽家と聴衆の間に強い連帯感…小沢征爾、歴史の一章に
海外勢で圧倒的だったのはラトル指揮のバイエルン放送交響楽団。リゲティ、ウェーベルンとブルックナーを取り上げた一夜は、研ぎ澄まされた響きで聴き手を異世界にいざなった。
■日本の若手活躍
日本の若手は音楽界の地図を塗り替えつつある。反田恭平(ピアノ・指揮)率いるジャパン・ナショナル・オーケストラは相変わらずの快進撃を見せ、ジャンルを超えて活躍する角野隼斗(ピアノ)が日本武道館で開いたリサイタルには、約1万3000人のファンが集まった。ピアニストの北村朋幹(ともき)や務川慧悟(けいご)、チェリストの上野通明らもソリストとして進境著しい。
来日奏者では、結成50周年を迎えたアルディッティ弦楽四重奏団が「サントリーホール サマーフェスティバル」で多彩なプログラムを披露して健在ぶりを示した。イザベル・ファウスト(バイオリン)は、古楽アンサンブルのイル・ジャルディーノ・アルモニコとの共演で愉悦に満ちたモーツァルトを聴かせた。
■物故者
巨星・小沢征爾(享年88)を失った痛手は言をまたない。戦後日本の音楽界にとって「世界に開かれた窓」そのものであり、多くの音楽家に希望を与える存在だった。国際的に活躍した作曲家の湯浅譲二(同94)と間宮芳生(みちお)(同95)、篠原眞(同92)も後進に世界への道を開いた。60代で奇跡の復活を果たしたピアニストのフジコ・ヘミング(同92)の人生は国境を超えて共感を呼んだ。東京混声合唱団を創設した合唱指揮者の田中信昭(同96)がいなければ、日本の合唱界はさびしいものになっていただろう。
海外では20世紀後半のピアノ演奏の基準を打ち立てたマウリツィオ・ポリーニ(同82)、作曲家のアリベルト・ライマン(同88)、ペーテル・エトベシュ(同80)、ウォルフガング・リーム(同72)、ウィーン・フィルの顔だったバイオリニストのウェルナー・ヒンク(同81)らが世を去った。
評論家4氏が選ぶ 今年の公演ベスト3 (日付順)
◆沼野雄司氏
・両国アートフェスティバル2024「二次創作」(8/3、両国門天ホール)