米国、キューバの国交回復はメジャーにどういう影響を与えるのか
同コミッショナーが他に強調していたのは、安価な市場開拓のチャンス到来という見方だ。外国人選手は海外FAの枠で獲得する格好になる大リーグだが、プイグなど高額選手も他のFA選手に比べると割安と言われている。07年にレッドソックスと契約した松坂大輔投手は入札金と併せて“1億ドル”の男と呼ばれ、ダルビッシュ(レンジャーズ)、田中将大(ヤンキース)ら日本のスーパースターが大リーグに移籍した際には、資金力に乏しいスモールマーケット球団がその競合から弾き出された。 最近の傾向として、09年に田沢純一投手を社会人新日本石油ENEOSから直接獲得する頃までは日本市場に熱心だったレッドソックスは、過去に現タイガースのイグレシアス内野手、昨夏にはカスティーヨ外野手を獲得、昨春は19歳の新星、モンカダ内野手と契約合意に達すると報じられるなど海外市場を日本からキューバに方向転換したかのようだ。コミッショナーが指摘するように、今回の国交正常化によって更にメジャー球団がキューバ選手獲得に前向きに乗り出すことになれば、日本のメジャー移籍志望組にも影響を与えそうだ。 MLBの国際市場拡大という分野でも、野球文化が浸透しているキューバは格好のターゲットであり、マンフレッドコミッショナーは国交回復の暁にキューバでのMLBの試合開催を計画していることを公式に認めた。レッドソックスが近年キューバ選手獲得の実績を積み、今春キューバでの親善試合を画策していたという情報が流れた背景もあり、記者会見ではボストンの地元メディアから「その派遣チームの有力候補はレッドソックスか?」という質問も飛んだ。コミッショナーは「具体的な話は何も始まっていないし、まだ派遣する球団を特定するには時期尚早」と語ったが、過去にキューバのナショナルチームを招待したオリオールズ、また、本拠地球場がキューバから最も近い米国の主要都市マイアミの中の“リトルハバナ”と呼ばれるキューバコミュニティーに隣接するマーリンズも候補の一角だろう。 今回の国交回復は最初の第一歩。国交正常化には、まだ多くの克服すべき課題があるとされるが、大リーグも時代の波を的確に捉えて、この転機をビジネスチャンスとして最大限に活用する準備を着々と進めている。メジャーのキューバ市場進出が更に加速する。