ミャンマーに難題を突きつけた森保ジャパンの“アタッキング3バック”。印象的だったのは3人の立ち位置の狭さ
すべてがうまくいったわけではなく…
印象的だったのは今回、日本の3バックが立ち位置を狭く取ったことだった。センターサークルのやや外側、約25メートルの幅に3枚が立ち、ボールを回した。ピッチ幅の半分よりも狭い。通常とは大きく異なるので、戦術的な意図があったのは明らかだ。 その影響を一番感じた人物は、ミャンマーのサイドハーフだったのではないか。プレッシング時はサイドハーフが縦ズレして1トップに加勢するのがミャンマーのやり方だが、自分が見るべき相手DFが真正面ではなく、幅を狭めて違うレーンに立っているので、単純に遠い。縦ズレではなく、斜めズレしなければ届かないし、仮にタイミング良くいけても、3枚で回されているので追い詰めきれない。 また、自陣のブロックで構える時も、伊藤や橋岡大樹に内側のパスコースを覗かれないよう、中へ絞ると、サイドが空いてしまい、大外で中村らに起点を作られる。逆も然りだ。間のレーンに立たれているので、いちいち判断に困り、次第に寄せられなくなる。幅が狭い日本の3バックは、相手[5-4-1]のMFの立ち位置を狂わせ、パスコースを空ける効果があった。 もっとも、すべてがうまくいったわけではない。徐々にミャンマーが裏抜けに対応し始めると、序盤ほどの美しいコンビネーションは見られなくなった。堂安の追加点後、およそ45分にわたり、日本は得点を生み出せていない。 また、守備面でも57分にロングキックの競り合いにいった谷口彰悟の背後を誰もカバーできず、こぼれ球を川村が奪われ、失点間近のショートカウンターを食らいかけた。なぜか、ミャンマーがバックパスを選択したので助かったが、瞬間的に2-1に迫られてもおかしくない場面だった。 こうした日本の軟調を変えたのは、62分の前田大然と相馬勇紀、両ウイング投入だろう。連係が滞っていた右サイドは、サイドアタッカーの相馬が入って活性化し、個人の仕掛けとクロスから小川の2ゴールを生み出した。 少し先を想像してみる。日本が誇る2人の世界的ウインガー、三笘薫と伊東純也の2人は今回も招集外となったが、今後の最終予選でも同様の状況はあり得る。それを踏まえ、日本はウイングの独破に頼らない攻撃システムや連係を模索したように見えたが、その模索が迷路にはまりかけたとき、再び突破口になったのは、やはりウイングだった。 結局、という言い方もできるが、前半からボールを回してミャンマーを疲弊させたため、90分の設計として、前田や相馬の投入が効いた面はある。 ただし、相手が最初から日本のやり方を分析し、対策してきた場合。ましてミャンマーよりも質やモチベーションが高い、最終予選の相手を、これほど疲弊させることができるのか。堂安の得点後、2-0のまま沈黙した45分間は「現時点ではノー」と答えている気がする。引き続き、すべてを高めなければならないだろう。 取材・文●清水英斗(サッカーライター)