<春再び・センバツ2021東海大相模>/上 個人よりチーム力で つながり、勝ち続ける 複数ポジションで競争 /神奈川
2年連続で選抜高校野球大会に選出された東海大相模は2020年10月、秋季関東地区大会の2回戦で東海大甲府(山梨)に1―2のサヨナラ負けを喫している。試合終了後のミーティング。選手たちは話し合い、気持ちを一つにした。「負けをいつまでも引きずっても、過去には戻れない。前を向いて全員で強くなろう」 昨年夏までのチームは、ドラフト指名されプロ入りする山村崇嘉さん(3年)や西川僚祐さん(同)らが主力として引っ張った。大塚瑠晏(るあん)主将(2年)は「個の力は昨年に比べてないかもしれない」と分析するが、「その分チーム力の強さでは負けていないと思う」とも言い切る。 そして掲げた合言葉は「つながる」。「個人個人ではなく、全員がつながって勝ちをつなぐ、勝ち続ける」という思いが込められている。小さな力でも、集まれば強くなるということを意識した。ウオーミングアップのダッシュ1本など細かなことから、「全力でやろう」と選手間で声を掛け合い、「打ち勝つ野球」を旗印とする一方でバントなどの小技も武器にしている。 秋の大会以降、練習前には「きょうのポジション」が書かれたボードがグラウンドに掲げられる。内野、外野にとらわれず、ポジションを大きく入れ替えた練習をするためだ。 東海大相模は20年夏、全国高校野球選手権神奈川大会に代わる独自大会「県高校野球大会」で優勝した。新チームのスタートとなった秋季県大会の地区予選はその決勝からわずか1週間後に開幕。新チームのレギュラーは固定できなかった。「メンバーの入れ替えは全部でありうる」という状況で門馬敬治監督が始めたこの練習は、1年生も含めたチーム内での競争につながった。 門馬監督は難しい挑戦を通じて選手の可能性を探りたいとも考えている。秋季大会で4番を務めた柴田疾(はやて)選手(2年)は本来の三塁手だけでなく、外野手や遊撃手の練習にも取り組む。「いろいろポジションをやるのは経験にもなるし、誰かがけがをしても代わりができる」と手応えを口にする。 新型コロナウイルスの影響で現在も練習には制限が伴う。「伸びるところで伸びきらない。練習を続けたら何かつかみそうなのに、時間も気持ちも切れてしまう」(門馬監督)という場面もあるという。柴田選手は「量ができない分、質を高めている。練習中も『質』と声を掛け合ったり、甲子園を意識したり。一球一球を大切にしてやっている」と話す。 センバツ出場を信じて練習を積み重ねてきたチームに吉報がもたらされた29日、選手たちは気持ちを新たにした。大塚主将は「秋に比べ確実に全員がレベルアップしている」と自信を見せる。「絶対に日本一になりたい」。チーム全員の思いを代弁した。 ◇ 第93回選抜高校野球大会は3月19日、兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で開幕する。20年に選出されながら大会の中止で出場がかなわなかった先輩の思いも胸に、再びセンバツの舞台に挑む東海大相模ナインを3回にわたって紹介する。(この連載は宮島麻実、池田直が担当します)