「ジャニーさんに食われるぞ」13歳の自分には忠告の意味すら分からなかった アイドルへの道は暗転、うつに悩み自殺願望も 「ジャニーズ性加害問題」(2)
「ひたすら寝たふりをしていました。でも頭は朝までずっと起きている状態」 翌朝、喜多川氏は学校に向かう少年たちを駅まで送っていった。だが、周囲の大人には何があったのか言えなかった。「親にも恥ずかしくて言えなかった」 ▽抵抗できず、支配され「大人はグルだ」 その後も被害は10回ほど続いた。場所はホテルや「合宿所」と呼ばれたマンションの一室。そのたびに1万円かそれ以上のお金を握らされた。二本樹さんは当時の心境についてぐっと考え込み、振り絞るように語った。 「お金で買われたようで、自分の存在価値を否定されたと思った。自分より力を持つ相手に抵抗できず支配されているような感覚です。自分が自分でなくなってしまうような…」 レッスン場での喜多川氏の振る舞いにも疑問を感じた。周囲に少年たちをはべらせ、ボディータッチも露骨。「当時の私は、全員知っていて黙認しているんじゃないかと感じていた。大人はグルだと思っていた」
ジュニアの仲間同士では「前の晩に何をされたとか、そういう会話が常態化していた」。ただ、それを語り合う際は冗談めかしていたという。「男なので強がって、心の痛みをごまかすために話していたのだと思います」 入所して1年ほどたった頃、ドラマの撮影で地方に長期滞在した。スタッフや共演者とも仲良くなった時、心境の変化があった。 「そこには性被害に遭っていない他の芸能プロダクションの子たちもいた。なんで自分だけ…って思ううちに、戻りたくなくなったんです」 ロケが終わると、退所を切り出した。喜多川氏から慰留されたが、意志は変わらなかった。1年半ほどのアイドル生活が終わった。「ホッとした一方ですごい喪失感もあった」 ▽うつ、自殺願望…苦しめる性被害の記憶 その後は、父親の転勤に伴って渡米し、音楽を本格的に学んだ。ミュージシャンとしても活躍した。 ジャニーズにいたことを周囲に話すことはなかったが、性被害の記憶はしつこく二本樹さんを苦しめた。自己肯定感がなく、自虐的な行動を取ってしまう。「慢性的なうつに悩み、自殺願望もずっとあった」。被害に遭った当時の喜多川氏と同じ世代の男性が近くにいると、恐怖に駆られる。メンタルが落ち着いたのは30歳を過ぎてからだったという。