「玄関に鍵はナシ」「一切の身体拘束もナシ」…介護施設入居者が『自分らしい』生活を送れるように手が尽くされた『至上の介護施設』とは
事故のリスクを防ぎながら、あたりまえの生活を支える
安全のためにと言いながら、手足を縛ったり、鍵をかけて閉じ込めたり、薬で動かなくなるようにしてはいけません。動きを制限するのではなく、その人の「動きたい」「立ちたい」「歩きたい」をその人らしく引き出し、支えるのが私たちの仕事です。 入居者をずっとベッドに寝かせておけば、事故は起こらないでしょう。立って歩けば転ぶかもしれない、口から食べれば喉に詰まらせるかもしれない、外に出れば交通事故にあうかもしれない……というように、普通のあたりまえな生活をしていれば、事故が起きる可能性はついて回ります。でも、ベッド上で寝たきりの状態のままでは、その人らしさは発揮できません。 私たち介護職は、普通に生きることがすでに「危ない」お年寄りの、普通に生きることを懸命に支える覚悟をもって、日々入居者の皆さんに接しています。なぜなら、私たちの仕事は一人ひとりのあたりまえの生活を一緒につくることだからです。 その人に役立つ物を準備し、その人のために勉強し、練習し、何度も話し合い。ときに「やってみなければわからない」ことを仲間とともに繰り返し、振り返り、お年寄りと一緒に泣いたり笑ったりしながら、「その人らしい生活」をつくっていきます。 お年寄りが、入居した施設で自分らしい生活をつくり上げていくことによって、家族も自分たちらしい生活を再び取り戻すことができます 『「私が母を施設に入れました」…親を介護施設に入居させた葛藤に苦しむ長男が見た、悲惨すぎる母の“変わり果てた姿”』へ続く
髙口 光子(理学療法士・介護支援専門員・介護福祉士・現:介護アドバイザー/「元気がでる介護研究所」代表)
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