アベノミクス第3の矢の要「国家戦略特区」とは何か?
政府は先月末の国家戦略特区諮問会議で、地域を限定して規制緩和を進める「国家戦略特区」を正式決定しました。選ばれたのは、東京圏(東京都・神奈川県・千葉県成田市)、関西圏(大阪府・京都府・兵庫県)、兵庫県養父市、新潟市、福岡市、沖縄県の計6か所です。 安倍首相は日本経済や社会が停滞している理由は強固な「岩盤規制」にあるとし、それを打破することで経済活性化を促すと強調しました。はたして、特区の設置は狙い通り日本経済をけん引する効果をもたらすのでしょうか。その概要と安倍政権の経済政策における位置づけを整理してみましょう。
これまでの「特区」との違い
そもそも「特区」とは、一律に決められた国の規制を外した特別なエリアのこと。民間企業の経済活動や地方公共団体の事業など、現場の実情に合わず、その地域のニーズを妨げている「規制」を解消する狙いがあります。つまり、大胆な規制緩和を行うことで、国際競争力の向上や新産業の創出を行っていこうというわけです。過去には、2002年の自民党・小泉改革時の「構造改革特区」や、2011年の民主党・菅政権時代の「総合特区」がありました。 これまでの特区は、自治体や企業、NPOなどの提案に基づき、国が認定する方式を採用しています。農家や民宿で自家製の「どぶろく」を提供して観光客誘致を図ったり、株式会社が学校設置の主体になったりするなどの取り組みが行われてきました。結果、さまざまなアイデアによって新しい試みが生まれたものの、日本経済への影響は大きいとはいえませんでした。 今回決まった国家戦略特区がこれまでと異なる特徴は、自治体ではなく国が主導するトップダウン型という点。国が戦略的に方針を決め、地方や民間事業者らが参加する特区会議を通じて、医療の拠点づくりや企業誘致、産業の活性化を推し進めまるというものです。高い経済効果が期待され、アベノミクスの成長戦略「第3の矢」の柱とされています。