星野真里×加藤ローサ『きみ継ぐ』 原作者とドラマ側で合致した思い、女性同士の恋と親子愛に「少し前は断られることも多かった」
■応えられない好意…「嫌なやつ」と思われても「実は多くの方が共感できるキャラクター」
──読者には女性が多いと思いますが、桜と萌音、どちらに共感する人が多いのでしょうか。 【小川まるに】どちらも母親として子どもを宝物のように愛しんでいるという点では、おそらく多くの方に共感していただけるのかなと思います。ただ、初恋をずっと心の中で大切にしてきた桜に対して、その思いを受け止めなかった萌音を「嫌なやつ」と思ってしまった方も、もしかしたらいたかもしれません。だけど、友だちとしては好きだけど、恋愛対象としては見られない。そういう相手に好意を寄せられた時に、どう応えたらいいかという葛藤って、きっと多くの方が経験したことがあると思うんです。 ──相手が異性同性に関係なく。 【小川まるに】はい。好意を否定するのはいけないことだとされがちですが、好意に応えられない側の苦しみもあるわけで。萌音にはそうした難しい感情をすべて背負わせてしまいました。「実は最も多くの方が共感できるキャラクターなのでは?」とも思っていたので、萌音についてはとても考えながら大切に描いてきました。演じるのも難しいキャラクターだと思いますが、ドラマ視聴者さんにも萌音の複雑で繊細な感情が伝わればいいなと思っています。 ■「多様性」を頭でっかちで考えるのではなく、大切な人の幸せを願う“当たり前”のこと ──『きみ継ぐ』を描くにあたって、大切にしてきたことを教えていただけますか。 【小川まるに】本作もそうですが、私が描く人物はあまり突拍子もない考え方をする人はいないんです。それはたぶん私が平凡な人間だからだと思うんですけど(笑)、多くの方が考えるようなことしか私も考えられない。それをマンガとして読んでもらうために、“当たり前”のことを掘り下げる、というんでしょうか。「意外とみんな似たようなことで悩んでいるんだし、だったら自分らしく突き進めばいいんだよ」ということを提示できたらいいなと思って描いていました。 ──“当たり前”のこととは? 【小川まるに】本作だったら、親は子どもの幸せを願っているし、子どもも親に幸せであってほしいと思っている。多様性という言葉で頭でっかちで考えるのではなく、目の前の大切な人の幸せを願うという当たり前なこと。それが社会に広がっていけば、もっとシンプルな世の中になるんじゃないかなという、そんな願いみたいなものを登場人物たちに体現させたところもありました。 ──最後に視聴者、読者にメッセージをいただけますか。 【小川まるに】前作の『花嫁未満エスケープ』もそうでしたが、私はあまりハッピーエンドとかバッドエンドとか明確な区切りを付けるよりも、キャラクターがその先も日常を生きていくような終わり方をするのが好きです。おそらく多くの方が気になるのは、「桜と萌音の2人がどんな結末を迎えるか?」ということだと思いますが、彼女たちがその先の人生をより良く生きていくためにどんな選択をするのか、最後まで見守っていただけたらうれしいです。 (文:児玉澄子)