首位広島で成長著しい矢野はなぜ打席で粘れるのか? 9連戦で相手投手に合計157球「ファウルを打とうとは」
広島は先週6日からの9連戦を5勝3敗1分けで勝ち越した。目立ったのは矢野雅哉内野手(25)の粘り。同期間は9試合で35打席に立ち、相手投手に計157球を投げさせた。なぜ、打席内であれだけ粘ることができるのか-。若鯉の打席内での意識、施した修正に迫った。 追い込まれてからが、矢野の真骨頂だ。しかし本人は意外にも「ファウルを打とうとは1球も思ってなくて」と打席での意識を明かした。 印象的だったのは9日からの阪神3連戦。二回2死一塁で村上の3球目を捉え、続く四回先頭では12球目を選んで四球をもぎ取った。六回2死では伊藤将の7球目をはじき返した。八回先頭では漆原の初球を打って全て中前打の猛打賞とした。 「追い込まれてからは三振をなくしたい。なので自然と球を引きつけるようになる。だけど追い込まれる前は『甘くいくと危ないな』と相手投手に思わせないとダメ。狙い球を絞ってしっかり振りたい」。粘る前提ではなく、若いカウントでの好球必打がしぶとさにつながっている。 11日は桐敷、岩崎という実績十分のリリーバーからもヒットを放った。先の阪神3連戦では計8安打のうち5安打が追い込まれてからの快音。一見、対照的に思える積極性と“粘っこさ”の両立を1試合の中で発揮できるのは、フォームの微修正も関連している。 6月ごろからバットのヘッドを捕手側に傾けて構えるようになった。朝山打撃コーチは「以前は直球を呼び込んでもファウルで逃げることができなかった。バットのヘッドが頭の後ろに入り過ぎている分、早く振りにいかないと(投球に)間に合わない」と説明する。 バットを寝かせ気味に構えることで直球を呼び込め、ファウルにすることが可能。そして浅いカウントで強振すれば、寝かせ気味のフォームでも外野の間を抜ける感覚をつかんだ部分も大きいという。 現在、二塁打は昨年の2本から9本に増えて、三塁打5本は阪神・近本と並んでリーグ最多タイという数字も、その成果を物語っている。「(積極的に)いく時は右翼方向、引く時は『ファウルでいいや』という打撃、そこのメリハリができている」と同コーチは分析した。 相手に球数を投げさせる意味について矢野はこう言った。「僕の前には、いい打者が多くいる。僕が球数を投げさせることで、その1球が後々の失投につながったりすると思う。そこが一番ですかね。自分だけの勝負じゃなくて次の回、そのまた次の回に響くような打席に毎打席、したい」。勝負の8月戦線。成長著しい若武者が唯一無二の存在感を発揮していく。(デイリースポーツ・向亮祐)