「源氏物語」を清書したのは藤原行成たち!「光る君へ」で史実にないアレンジを加えた理由
第37回では「源氏物語」33帖が完成し、彰子が藤壺(後宮の殿舎のひとつ)に渡ってきた一条天皇に献上した。根本はこの豪華版の「源氏物語」の装丁、紙のほか、執筆シーンで登場するすずりなどの小道具にも携わっている。 「一番こだわったのが装丁です。 糊でつけた粘葉装(和装本の装丁法の一種)なのか、糸で綴じた綴葉装なのか。書くだけではなく、そういったことをスタッフの方々と一緒に考えられるのもすごく楽しいです。難しいのが紙。表紙、中の紙は何を使うのか。実は雲紙も使っているんですけど、史実では装飾料紙(書に使われる用紙のうち装飾されたもの)が出てくるのはもっと後期なんです。ドラマの演出では雅なものにしていきたいということで、時代考証的にはNGなんだけど継紙(色や質の異なる紙を数種継ぎ合わせたもの)も取り入れたり。『源氏物語』の後半は一条帝に合わせて継紙ではなく、金銀の装飾料紙を入れています。ちなみに、『枕草子』は中国から伝わった唐紙を日本で作った設定にして、木版刷りは雲母を塗ったような印刷にしました」
多くの人が待ち望んだであろう劇中の「源氏物語」に関する舞台裏エピソード。スタッフが一丸となり、世界に一つだけの豪華版が生まれた。(編集部・石井百合子)
根本知(ねもと・さとし)
立正大学文学部特任講師。教鞭を執る傍ら、腕時計ブランド「Grand Seiko」への作品提供(2018)やニューヨークでの個展開催(2019)など多岐にわたって活動。無料WEB連載「ひとうたの茶席」(2020~)では茶の湯へと繋がる和歌の思想について解説、および作品を制作。近著に「平安かな書道入門 古筆の見方と学び方」(2023)がある。