マーリンズと合意したイチローを待ち受ける難問とは?
ファンらにも評判が悪い。 2012年シーズンが終わると、前年のオフに契約したばかりのマーク・バーリー、ホセ・レイエスら、年俸の高い選手らを一斉にトレード。その時、ファンらが、「勝とうとする気があるのか」と不満を露わにし、ボイコットも辞さない構えを見せた。2012年に開場したマーリンズ・パークには、彼らの税金が使われている。そうして点からも、反発が大きかった。 ただ、そういう声が、ローリアに届いているふしがない。 そもそも、今の彼の興味は、チームを強くすることではなく、球団の売却のタイミングとも言われる。彼はこれまでも、わらしべ長者のようなオーナー人生を送ってきたのだ。 1989年にレンジャーズのマイナーチームを380万ドル(4億5000万円)で買収。4年後、800万ドル(9億4000万円)で売却。1999年、1200万ドル(14億円)でエクスポスのマイノリティオーナーになると、翌年、1800万ドル(21億円)を増資し、チームの所有率を94%に引き上げ、筆頭オーナーとなった。2002年には、そのエクスポスを1億2000万ドル(141億円)でリーグに売却し、同時にマーリンズを1億5850万ドル(187億円)で買収。差額は、リーグから無利子で借りた。 そして今、マーリンズの価値はといえば、売却した場合、5億ドル(590億円)は超えるとされる。新球場があり、選手らの年俸が安い。売却するには、好条件が揃い、彼には莫大な売却益が保証されている。 イチローは、そんなオーナーのチームに行くことになるようだが、今年のマーリンズは、チームとしては面白い。 スタントンはMVP候補。6月に復帰予定のヘルナンデスも、将来は、サイ・ヤング賞を獲ると目される器。オフには、パワーのあるマイケル・モース、打率3割が期待できるマーティン・プラド、二桁は勝てると見込まれるマット・レイトス、昨年64盗塁で盗塁王となったディー・ゴードンらを加え、派手さはないが、堅実な補強ができたと評価されている。 さらにチームには、若い選手が多く、伸びしろが期待できる。よって、マーリンズは今季、十分にプレイオフ出場が狙えると、見られているのだ。 イチローとしては、そんな魅力に惹かれたのだろうか。 何れにしても、予定調和というよりは、これまでの価値観や固定観念を覆すような決断に映る。 キャンプが始まった時、イチローは、この決断の背景をどう説明するのか、興味深い。 (文責・丹羽政善/米国在住スポーツライター)