「見えないカネ」16億円 政治資金規正法の「抜け道」あらわに 公開基準に格差、専門家「抜本改正を」
京都府と滋賀県の選挙管理委員会が定期公表した2022年分の市町村長や地方議員らの政治団体計1769団体(国会議員関係を除く)の収支報告書で、内容や支払先の明細が明らかにならない支出が約16億円に達することが、京都新聞社の調査で分かった。「見えないカネ」は支出総額の約5割を占める。27日投開票の衆院選で「政治とカネ」が焦点となる中、専門家は「透明性を確保するために、抜本的な法改正が必要だ」と指摘している。
国会議員に関係する政治団体以外は、政治資金規正法が定める支出明細の公開基準が緩く、透明度に大きな格差がある。法自体が「抜け道」を用意し、「政治とカネ」の透明性を阻んでいることで、巨額な政治資金の使途を市民がチェックできない現状が浮かび上がった。
■支出総額約34億円、うち47%が明細不明
1769団体の支出総額は33億9800万円(京都25億6000万円、滋賀8億3700万円)。これに対し、47%に当たる15億9600万円(京都10億6900万円、滋賀5億2700万円)の使途が、報告書には記載されていなかった。
例えば、京都市内に事務所を置く政治団体は、支出総額1540万円のうち1310万円の明細が公開されていない。京都府内のある首長の資金管理団体は組織活動費340万円のうち、「檄文(げきぶん)印刷代」10万円を除いた330万円の使途が分からず、ある滋賀県議が代表の政党支部では、交際費全額380万円の支出先が確認できない。
■国会議員なら1万5千円の出費でも、分かる
一方、京都と滋賀選出の複数の国会議員の収支報告書からは、「京都パープルサンガ後援会」の会費に1万5千円▽東京都・赤坂の日本料理店での食事代に2万円―などを支出していることが分かる。
なぜ、「見えないカネ」が約16億円も発生するのか。政治資金規正法で使途の明細公開が義務づけられているのは、国会議員関係政治団体の場合、1件「1万円超」の支出。それ以外の、知事や市町村長、地方議会議員らも関わる「資金管理団体」「政党の支部」「その他の政治団体」は、1件「5万円以上」に限られていることが原因だ。この違いが、透明性に格差をもたらしている。
政治とカネの問題に詳しい神戸学院大の上脇博之教授は「政治資金を巡る透明度がいかに低いのかを如実に示している。現行の制度がもたらした構造的な問題で、全国の都道府県でも似通った傾向が想定される。せめて国会議員関係の政治団体の水準まで透明度を高めなければいけない」と話している。