東京メトロ上場に「鉄オタ」も熱視線、株主優待内容巡りすれ違う賛否
23日に東証プライム市場に上場する東京メトロのIPOは、18年に上場した通信手のソフトバンク以来、6年ぶりの大型案件だ。売り出し価格は仮条件上限の1200円に決定。政府と東京都が保有分のそれぞれ50%を売り出し、3486億円を調達する。政府保有株の上場規模としては15年の日本郵政以来で、売却資金は東日本大震災の復興債の償還費用に充てる。
東京メトロ上場で盛り上がるのは鉄道ファンが集う社交場だけではない。「投資の神様」と呼ばれるウォーレン・バフェット氏もさかなに、株式投資家が金融談義に花を咲かせる東京・銀座の「投資家バーStock Pickers」で店長を務める今泉早人さんは、「株クラ」と呼ばれる個人投資家のコミュニティーで数週間前から東京メトロが話題に上っていると語った。
常連客の戸塚史明さん(54)は東京メトロの売り出しで2000株を申し込んだ。りんご風味のノンアルコールカクテル「ITバブル」を飲みながら、「利回りは一切計算していない。優待だけで応募した」と打ち明ける。投資歴23年のベテランである戸塚さんは現在、米国の債券や株式を中心に運用しているが、定期乗車証の株主優待に魅力を感じ、保有したいと思ったそうだ。
戸塚さんは、30年ほど利用している東京メトロに強い愛着があるとし、「時間通りで2-3分に1回来るところを非常に信頼している」と言う。過密で正確無比に運行される日本の鉄道は、海外の交通機関では見られない特徴の一つだ。
配当利回り3%超
8月の歴史的な株価急落や自民党総裁選後の金融市場の波乱が記憶に新しい個人投資家にとって、経営の安定性と共に3%を超える予想配当利回りは東京メトロ株を買う理由になる可能性がある。ブルームバーグのデータによると、東証株価指数(TOPIX)の予想12カ月配当利回りは2.4%、東証陸運業指数は1.8%となっている。
フランス出身で、日本に16年間住む個人投資家のフランシスコ・ベタンクール氏は東京メトロの成長は緩やかかもしれないが、「非常に安全な投資対象」とみている。物流業界に勤務する同氏は、IPOの熱狂が落ち着いた時点で東京メトロ株を買う意向だ。東京は日本の中で人口が増えている数少ない都市の一つで、長期的な投資先として理にかなっていると言う。