「ドアをぶった切るぞ」...ロシア当局の強引な家宅捜査で、反戦派ジャーナリストが奪い取られた「かけがえのない宝物」
ドアが切られそうに...
「すぐ弁護士に電話して」わたしはクリスティーナに言った。「どうすればいいか聞いて。押し入ってきたらアリーナがビックリするんじゃないかと心配なの」 娘は自分の部屋で寝ていて、大きな音は聞こえていないはずだった。 拳でドアをバンバン叩く音が続いた。 「開けろ! 早く……、捜索令状がある」 「弁護士に電話をしたいんですが」わたしは叫んだ。 「早く開けないとカギをカッターで切るぞ」ぶっきら棒な男の声が答えた。 ドアの穴からのぞくと、玄関先には非常事態省の制服の男がいた。手には電動カッターを持っていた。 急いでドアを開けた。10人ほどの捜査員が家の中に飛び込んできた。その中にはわたしを見張っていた過激派対策センターの男がいた。彼はいつも通り、顔を黒い目出し帽で隠していた。 「お願いだから娘を驚かさないで。まだ寝てるんだから」 「ロシア連邦刑法第207条3項、ロシア軍に関する虚偽の情報を意図的に流布した容疑で家宅捜索をおこないます」灰色の背広を着た若い男が言った。「わたしは取調委員会特別重大事件の捜査官です。さあ、始めるぞ」
突然始まった家宅捜索
最後の命令は2人の私服の男に向かって言ったものだった。彼らは猟犬のように戸棚の中身を調べ始めた。 「弁護士を待ってもらえませんか。1時間以内には来ます」クリスティーナが2階から下りてきて言った。 「その必要はありません」捜査官が答えた。 「何を探しているんですか。お手伝いできることがあれば」咳を我慢しながら、わたしはきいた。 「あなたの電子機器類はすべて必要です」捜査官が答えた。 「はい、携帯電話です」わたしは自分から携帯を渡した。 「これは誰のアイフォンですか?」捜査官はベッド脇のテーブルに置いてある2台目の携帯を見て言った。 わたしは視線をそらした。クリスティーナが助けに入り、前に出て言った。 「わたしのです」 「パスワードを入れてみてください」捜査官はクリスティーナの言うことを信じていないようだった。
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