ドジャースは“NPBに見捨てられた男”北方悠誠の何を評価してマイナー契約を結んだのか?
理想とするのはドジャースのウォーカー・ビューラー(24)だ。昨年からローテー抜擢された2年目の若手右腕。160キロのストレートとスライダーのコンビネーションで奪三振を演出するタイプで北方のスタイルに似ている。今季は、ここまで防御率4.03だが、5勝1敗の数字を残している。「真っすぐのスピードで抑えているピッチャー。そこを目指して参考にして頑張っていきたい」と、北方が名前を挙げたのも納得である。 英語については「単語はわかる。あとはアプリでなんとか勉強していきたい。不安はあるんですけど、自分の中ではジェスチャーで、なんとかなるんじゃないかと」と頼もしい。 ただドジャースでは、北方専属の通訳を探しており3Aには元マエケンの通訳がいて、2Aにも日本人トレーナーがいるなど、ドジャースには9、10人の日本語のできるスタッフがいるため、鈴木氏も「うちのチームは誰かがフォローして一人でポツンということはない。携帯でもやりとりができる。他のチームにはない(環境)」と、言葉に関する心配はいらないらしい。 今後はビザが下り次第渡米し、キャンプ地であるアリゾナ州グレンデールのキャメルバックランチでメディカルチェックを受け、同時に現在の北方のパフォーマンスやコンディションをフロントやコーチ陣がチェック、評価した上で、「今、彼に登板機会が与えられるところはどこか、(3A、2Aなどの)レベルではなく(所属チームを)決めていくことになる」(鈴木氏)という。 「栃木では試合の中で感覚のいい状態を維持できた。使ってくれた監督、コーチに感謝したい。栃木ではマウンドに行くときのファンの声援が励みになった。試合が終わってからのファンとのハイタッチでも温かい声をかけてもらった。感謝しています」 快くメジャーへ送り出してくれた栃木ゴールデンブレーブス、そして短い時間だったが、声援を送ってくれた地元ファンへの感謝の念があふれ出てくる。 そして北方は「両親になんとか野球をしている姿を見てもらいたくてやってきたところもある」と両親への感謝の気持ちも口にした。 だからこそ「プレーで恩返しができるように頑張っていきたい」と誓う。しかし、ここはゴールでなくスタートである。 契約優先のメジャーにおいてマイナー契約の選手が這い上がっていくのは容易ではない。だが、“NPBに見捨てられた男”のサクセスストーリーとしては夢がある。「北方イコール制球難」の固定観念のない世界で、どれだけの評価を勝ち取ることができるのか。 この日の会見には、NHKや民放のテレビカメラに加え、東京からも多くのメディアが駆けつけていた。 「ここからなんです。上のレベルへ行くためにやっていたので。そのスタートラインに立ったかなと」 背番号未定のドジャースカラーのユニホームに袖を通し、帽子をかぶった照れ屋の北方は、少しだけ誇らしげに笑った。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)