【2024ふくしま衆院選 託す思い】観光 誘客へ継続支援必要 地方訪れる施策願う
コロナ禍を経て、福島県内の観光業者は物価高騰による支出増などに直面しながらも、観光客の受け入れ強化やインバウンド(訪日客)の取り込みに知恵を絞る。観光産業は飲食、交通、レジャーなど裾野が広い。関係者は「地域活性化のため、地方の実情に応じた継続的な支援を講じてほしい」と求めている。 会津盆地を一望できる会津美里町の温浴・宿泊施設「新鶴温泉んだ」。施設を経営する共生代表の菅家薫さん(65)は「一時的な支援ではなく、中長期的な視点に立った施策をお願いしたい」と求める。 県内の7月の延べ宿泊者数は約88万人で前年同月から約8万人増えた。「新鶴温泉んだ」も同様で、コロナ禍後の宿泊者数が増加傾向にある。一方、物価高を背景に、電気代や水道代など施設運営に必要な経費や人件費は上がった。安易に料金を上げれば、常連の入浴客やコロナ禍を経て戻った客が離れてしまうと懸念する。 各党は観光資源の付加価値化を高め、旅館・ホテル業の振興をうたう。ただ、多くの施設で足元の経営は厳しい状況が続いていると感じている。「地域のために尽力している事業者の支援にもっと目を向けてほしい」と強調する。
◇ ◇ 各党は持続可能な観光地づくりも公約に盛り込んだ。併設するスキー場の今季オープンを12月末に控える猪苗代町のホテルリステル猪苗代総支配人の月井英美さん(59)は「地方への誘客に向けた施策が必要」と力を込める。 スキー客は少子化やレジャーの多様化などを背景に、1990年代初頭のピーク時に比べ半減した。一方、人件費などの運営コストは上昇の一途をたどっており、県内では廃業や休業するスキー場が相次いでいる。 月井さんは「地方に足を運びやすいように、バス料金の補助などを手厚くしてほしい」と訴える。 ◇ ◇ 昨年の県内の外国人延べ宿泊者は過去最多の17万9千人余りで、観光業界の訪日客への期待は大きい。一部の党は訪日客の増加を公約に入れた。 県内のゴルフ場ではコロナ禍前、韓国を中心に多くの外国人客がプレーしていた。コロナ禍が明け、各ゴルフ場は一層の誘客を目指している。
いわき市の湯本スプリングスカントリークラブの支配人平山忠幸さん(54)はゴルフ人口の減少を背景に、外国人客に熱視線を送る。平山さんによると、以前は売り上げの半分ほどを外国人が占めたゴルフ場もあったという。ただ、外国人客が足を運ぶのは東京や大阪など首都圏や関西が中心で、本県はごくわずか。「観光立国をうたうのであれば訪日客が全国に足を運ぶような仕組みづくりをしてほしい」と提案する。