黒い雨「客観的事実捉えられず」 長崎の被爆体験記調査 厚労省
長崎への原爆投下時、国が定める被爆地域外にいたため被爆者と認定されない「被爆体験者」を巡り、厚生労働省は17日までに、当時の被爆体験記を調べた結果を公表した。 専門家の意見を踏まえ、放射性降下物を含む「黒い雨」について「客観的事実として捉えることはできない」と結論付けた。 厚労省は長崎県と長崎市の要望を受け、昨年7月に調査を開始。国立長崎原爆死没者追悼平和祈念館(長崎市)が所蔵する約13万件の体験記のうち、被爆地域以外の記述がある3744件を調べた。その結果、雨に関する記述が41件、飛散物に関する記述が159件確認できたという。 この記述について厚労省が疫学や統計学の専門家3人に評価を依頼したところ、「思いを記述したもので、データとしては信頼性に乏しい」「被爆体験から執筆までに記憶の修飾がなされている可能性がある」などの意見が出された。このため、降雨を客観的事実として捉えることはできず、引き続き天候についての記述の調査を進めるとした。