今や菌に薬が効かない「ポスト抗生物質」時代に突入と医師が警鐘、世界で年500万人が死亡
不必要な抗生物質の使用を控える
科学者らは、今も効果的な新薬を探し続けている。米マサチューセッツ工科大学の研究者らは最近、ある細菌の酵素を阻害する方法を発見した。これは新たな種類の抗生物質の開発につながる可能性がある。このほか、人工知能(AI)を活用して新薬の候補を見つけ出そうと試みる研究もある。 一方、多くの病院では、耐性菌の感染を最小限に抑える手順を定め、手指の衛生、器具の消毒計画、院内清掃の改善などに取り組んでいる。 こうした対策にはまた、入院中に抗生物質を使う期間を適宜短くすることも含まれる。抗生物質の使用を抑えれば、死亡率を上昇させずに入院期間を短縮しうる。 地域の診療所で患者を診ている医師もまた、患者を安心させるために抗生物質を出すなどの不必要な処方を控える必要があると、イェク氏は言う。 抗生物質は、常に正しい解決策になるわけではない。副鼻腔炎という鼻の疾患は、アレルギーで起こる場合もある。インフルエンザの原因はウイルスだ。いずれのケースでも、抗生物質では改善は見込めない。 もしあなたが実際に細菌感染症にかかり、医師から幅広い種類の細菌に効く抗生物質を処方されたときには、より標的を絞った薬の方が効果があるのではないかと聞いてみてほしいと、イェク氏は言う。 また、マーティネロ氏は、抗生物質を含む可能性の低いオーガニック食品を購入したり、食品会社に対して動物や作物への抗生物質の使用を減らすよう働きかけたりすることを勧めている。 マーティネロ氏は言う。「抗生物質の恩恵はいずれ失われる可能性があることを、われわれは理解する必要があります。間違った使い方をしていれば、その危険性はさらに高まります」
文=Meryl Davids Landau/訳=北村京子