チェジュ航空機事故、韓国メディア「『丘』がなければ被害少なかった可能性」…当局はレコーダー分析へ
【務安(ムアン)(韓国南西部)=小池和樹】韓国の務安国際空港で179人が死亡した飛行機事故は30日、警察などの調査で146人の身元が確認された。空港では家族らが遺体の引き取りを待ち、焼香所には知人や市民らが次々と訪れて祈りをささげていた。
「鳥の活動活発なことを知らないのか」
「母になぜ温かい言葉をかけてあげられなかったのか。父のことを思いやってあげられなかったのか。旅行前に連絡一つしなかった。謝りたい」。両親が犠牲になったソウルに住む男性(44)は、読売新聞の取材に対して涙ながらに語った。
済州島(チェジュド)に暮らす父(72)と母(70)は、父の元職場の同僚らとタイ旅行に出かけ、事故に遭った。母は海外旅行のため、洗車の仕事をして貯金した。離れて暮らす男性は忙しくて連絡を密にとっていなかった。旅行の正確な予定も把握せず、韓国メディアの報道で両親が搭乗者に含まれていると知り、長男(47)とともに駆けつけた。30日、空港内の遺体安置室で変わり果てた母親と面会した兄弟は「早く済州島に連れて帰ってあげたい」とつぶやいた。
鳥との衝突が事故原因として浮上したことについて長男は「空港近くで鳥の活動が活発なことを航空会社は知らないのか。自然が起こした事故ではなく、人災だ」と語気を強めた。
空港近くには30日、合同焼香所が設けられ、知人や市民らが次々と訪れ、犠牲者の位牌(いはい)に花を手向けていた。
友達10人と訪れた、空港近くの南部・光州(クァンジュ)市の大学1年パク・スンジェさん(19)は高校の同級生男性が犠牲になった。同級生は浪人中で「勉強ばかりしていた」が、祖父母と両親、姉の6人で向かうタイ旅行を心待ちにしていたという。事故の7時間前にも連絡を取り合っていたといい、「帰ってきたら会おうと話していたのに、信じられない」と声を落とした。
同市内に住む50歳代の男性は後輩男性(46)が旅客機に搭乗していた。最近、タイのパタヤに韓国料理屋を開いたばかりで頻繁に両国を行き来していたという。「一日も早く故郷の街に連れてきてほしい」と言葉少なだった。