キッチンやバスルームの入れ替え可能!建築家が考えた100年後も住み継げる「可変性のある家」
日本の住宅は、新築時が最も価値が高く、年月の経過とともに下がり、40年もすればほとんど価値を失ってしまいます。そこに異を唱える建築家の横堀健一さんとコマタトモコさんが自邸で目指したのは、時間と文化を継承しながら価値を高めていくことでした。 【写真集】100年後も住み継ぐ⁉建築家・横堀健一+コマタトモコさんの普遍的な自邸 価値ある住まいの条件は、自然の営みを感じられることだと考える2人がつくり上げた独創的な空間の秘密とは?詳しく見ていきましょう。
“時間と文化の継承”を意識
「ヨーロッパでは古い石づくりの建物の外観を変えずに、内装を住み手が自由にリノベーションして住み継ぐのが一般的です。築年数が200年以上の建築物も多く、文化遺産として価値の高いものもあります。戦争が頻発していた歴史的な背景があり、自国の街並みを守る意識が高いからなのかもしれません」。 建築家の横堀健一さんとコマタトモコさんが、住宅に対して強く意識しているのが“時間と文化の継承”です。日本において住宅の価値は新築時が最も高く、築年数に比例して下がっていく一方。また、家族の歴史が刻まれた器である住まいが、簡単に壊されてしまうのは実に惜しいものです。
空を望める吹き抜けの階段室
四方に規則的に設けられた開口や、階段室のトップライトからは、刻々と変わる太陽と月の動きが。最も明るい東南の空間は夏、移植した桜を望む南西は春、カエデに向かって開いた北西は秋、主に収納庫として利用している北東は冬をテーマにしています。
間取りを自由に変えられる田の字の設計
現在、この建物は東南側がオフィス、北西側が住居という使い方をしています。インテリアは “可変性”をテーマに、家具のレイアウトはもちろん建具や照明のデザイン変更も容易です。水まわりの移動もできる設計のため、キッチンの移動やベッドルームとバスルームの入れ替えにまで対応できるそう。 100年後、新たな住み手が内装も機能も変えているかもしれません。ですが、この普遍的な建物は、太陽や月の動きや四季の移ろいとともにある豊かな時間を、今と変わることなく住み手に届けていることでしょう。