世代交代を図ったかつてのチャンピオンたちのチャレンジ(Wリーグ・ENEOSサンフラワーズ vs トヨタ自動車アンテロープス)
「今までの伝統などはもう関係なく、新しく築きあげていかなければいけない」長岡萌映子
「タクさん(渡嘉敷来夢)を優勝させたい」とトヨタ自動車で2連覇を果たした長岡が、ライバルのENEOSへ移籍してきたのが2022-23シーズン。有言実行ですぐさま頂点へ連れて行った。原動力となる存在は移籍したが、長岡は変わらず貪欲に勝利に向かって身体を張り続ける。開幕戦の第4クォーター開始早々、常勝軍団時代を知る唯一の存在となった宮崎早織とのコンビプレーで、得点を量産。終わってみれば22点の活躍。「みんなでガマンして、自分もそこまで良くなかったんですけど、後半はボールを集めてもらって決めきることができて良かったです」とシーソーゲームを抜け出した。 ENEOSへ移籍してきた1年目はリーグ制覇とともに、皇后杯10連覇の金字塔を打ち立てた。しかし、在籍3年目の長岡にとって、常勝軍団としてのプレッシャーは背負っていない。16年ぶりに皇后杯もリーグ戦も優勝を逃した悔しい昨シーズンだったが、「チャレンジャーとして戦っていくしかない。今までの伝統などはもう関係なく、新しく築きあげていかなければいけない」と若いメンバーと一緒に新章を切り拓いて行く。 今月22歳の誕生日を迎えたばかりの三田七南が先発を任され、7年目だがこれまではケガによって思うようにプレータイムを伸ばせなかった藤本愛瑚に対し、「3番ポジションがもう少し頭角を現して欲しい」と長岡は期待を寄せる。「特に三田は若いですが、もうスタートで出ているので責任を持ってプレーして欲しいと思っています。鼓舞しつつ、しっかり言うときも必要だと思うので、そこはユラ(宮崎)と高田(静)と一緒に引っ張っていきたいです」という長岡の姿もどこか新鮮に感じた。 「トヨタで一番年上だったときは同い年の三好(南穂)がいたので、彼女に甘えていた部分もありました。でも、今は正真正銘一番年上なので、私としてもチャレンジャーとしてがんばっていきたいです」 今シーズンの原動力は「王座奪還」。これまでのように経験豊富なタレントが揃っているから優勝できたイメージを払拭すべく、「若くても、新しいバスケでも優勝できるんだぞ、プライドがあるんだぞ、というのを見せられるようにがんばります」と長岡は力を込めた。 昨シーズンENEOSは3位、レギュラーシーズン4位だったトヨタ自動車は、その後のプレーオフはクォーターファイナルで敗れ、最終結果は5位。昨シーズンの上位8強で争われるプレミア化したWリーグはタフなゲームが続く。今週末、ENEOSは同4位のシャンソン化粧品シャンソンVマジックと、トヨタ自動車はチャンピオンチーム富士通レッドウェーブと対戦。開幕2戦が接戦だったのは、同じ境遇のチーム同士だったゆえの結果かもしれない。チャレンジングなアウェーゲームは早くも真価が問われる。
泉誠一