【西武投手王国への道】色濃くなったチーム内で刺激し合うカルチャー「今のうちには怠ける子がいない。彼らの取り組みをリスペクトしています」(豊田コーチ)
与四球、奪三振にフォーカスして
投手陣の成長を感じるからこそ、豊田コーチは今年未達だった二つの目標を残念に感じている。一つは与四球だ。511個だった昨年から61個減らしたいと目標を立てたが、一歩届かずに453個だった。 二つ目は奪三振。昨年は1010個で06年以来の4ケタに到達、今季も目指したが974個にとどまった。 セイバーメトリクスでK/BBという指標があるように、三振と四球は投手自身がコントロールできるものだ。運の要素も含まれる安打や凡打とはその点で異なる。だからこそ具体的な目標を掲げて追い求めてきた。豊田コーチが続ける。 「オリックスやソフトバンク、日本ハムは背の高いピッチャーが真っすぐでドーンと行ける。うちはみんながそうではなく、こねくり回すところがある。凡打は取れるけど、三振はほかのチームほどではない。だからフォアボールが邪魔になってくるところは確かにある。接戦になると三振が奪えるのはすごく大きい。今井が多く取り、隅田も取れるようになったので、チームで1000個は取りたかった」 西武では防御率や奪三振、与四球など各項目のチーム目標を立て、全員で達成しようと毎年取り組んでいる。15人の投手が与四球を2個ずつ減らせば、チームで30個の減少だ。 同時に個々が理想の姿を追い求め、チーム内で刺激し合っていく。そうしたカルチャーが色濃くなり、今や球界トップクラスの投手陣と評価されるまでになった。 今井や隅田、新人王当確の活躍を見せたルーキー武内夏暉など一軍だけではない。好循環は二軍や三軍にも伝わり、今季一軍デビューを飾ったのが高卒3年目の菅井信也や羽田慎之介、高卒ルーキーの杉山遙希だ。OBとして豊田コーチは頼もしく感じている。 「下の選手たちは『今井さんがいいな』『平良さんはこうだな』とあこがれます。だから、これからもっと良くなっていくかもしれない。これまでは、われわれを含めてFAで抜けていくばかりでした。(伝統を)伝え切れないまま終わって、成績的にパーンと弾けたのが6年前くらいだと思う。今は若い段階で一本立ちしているピッチャーがいっぱいいるので、そういう姿をもっと若い子たちが見て学んでくれればいいと思います」 投手王国、再建へ――。 山賊打線で18、19年にリーグ連覇を飾った直後、中心になってチーム編成を進めた渡辺久信GMは今季限りで退任したが、現場で陣頭指揮を取る豊田コーチの下、力のある面々が台頭している。今季は貧打をカバーして勝利に導くことはできなかったものの、投手陣全体として前に進んでいるのは間違いない。 果たして来季、西武は歴史的低迷から巻き返すことはできるだろうか。西口文也新監督が就任会見で「守り勝つ野球」を掲げたように、投手陣のさらなる進化がカギになる。
週刊ベースボール