【同調圧力の正体】昭和と令和の価値観が混在する現代社会の問題を読み解く!
価値観が大きく変化し続ける現代。多様性がキーワードになりつつあるものの、依然として「同調圧力」は存在しています。さまざまな価値観が混在する“今”だからこその同調圧力とは? そして、今の社会で、yoi読者にも多い30代が置かれている状況とはどんなものなのでしょうか? 社会学者・貴戸理恵さんにお話を伺いました。 【画像】同調圧力に抵抗するには? 同調圧力…集団において、少数意見を持つ人に対して、周囲の多くの人と同じように考え行動するよう、暗黙のうちに強制すること。
「同調圧力」を生む現代の価値観は「伝統的な価値」「リベラルな価値」「市場的な価値」による三つ巴のモザイク状になっている
──日本には、多くの同調圧力があるといわれており、SNSなどでは同調圧力に悩む人の声が散見されます。少数派の価値観を抑えこむことが多い同調圧力ですが、価値観が移り変わる真っ只中の現代では、同調圧力の特徴も変化しているのでしょうか? 貴戸先生:現代では価値が多様化している一方で、根強い同調圧力があります。この「多様なのに同調を迫られる」という不思議な状況について考えるとき、3つの価値を腑分けしてみることがヒントになります。 まず「伝統的な価値」。戦後の高度経済成長期に広まった「日本型」の家族や企業、教育などに根差した価値を、そう呼ぶことができます。男は仕事・女は家庭という性別役割分業、痴漢やセクハラが当たり前の環境、滅私奉公の奨励、「仲間である」ことを認識するための非合理な慣行……。これらは差別や偏見を含んでいたり時代に合わなかったり、見直す必要があるものも多いです。 次に、多様性を肯定する「リベラルな価値」。これはマイノリティの権利の尊重や共生の思想などいろんなものを含んでいます。女性だからといって妻や母という役割に閉じ込められなくていい、LGBTを含む性的マイノリティの権利を尊重すべき、障害の有無や国籍の違いにかかわらず共に生きる社会をつくる、というものですね。日本では1970年代頃からのマイノリティ運動のなかで主張され、グローバルスタンダードに合わせる必要もあって、次第に制度に組み込まれていきました。 もうひとつは「市場的な価値」です。これは競争に勝つ、能力を高める、個性を生かして生産活動をする、消費を通じて承認を得る、などを重視する考え方です。 現代では、この「伝統的な価値」「リベラルな価値」「市場的な価値」が三つ巴のモザイク状になっています。そして、人々は属するコミュニティや状況により、これらの価値観それぞれから──特に「伝統的な価値」と「市場的な価値」から──「こうであれ」という同調圧力を受ける可能性があり、身動きが取りづらくなっていると考えられます。