5期生は「セラミュ」で舞台初挑戦、メンバーの飛躍の礎にもなった乃木坂46と演劇の濃密な関係
小劇場で落語やギャグ、西部劇に奮闘してきた卒業生
卒業したメンバーがメインキャストを演じた舞台の中で特徴的な作品が『じょしらく』と『すべての犬は天国へ行く』だ。『じょしらく』は、5人の女流落語家が登場するゆるい日常系4コママンガを舞台化。5人の配役をトリプルキャスト、合計15人で演じた舞台だが、劇中では生の落語披露に加えて、原作のゆるさを再現したギャグやショートコントのようなやりとりも見どころ。現実のメンバー同士の関係性を活かしたメタ的な展開もあって、5人で客席を笑わせ続けたメンバーのコメディセンスが生かされた舞台になり、2015年と16年の二度にわたって上演された。 『すべての犬は天国に行く』はもとは劇作家のケラリーノ・サンドロヴィッチが01年に手がけた戯曲で、15年の再演に乃木坂46メンバーが出演した。内容は開拓時代のアメリカ西部で、男がおらず女だけになった街で展開される西部劇ベースの不条理劇で、現役アイドルがやさぐれた女たちを演じるハードルの高い芝居でもあった。 本作に出演していたのは生駒里奈・伊藤万里華・井上小百合・桜井玲香・新内眞衣・松村沙友理・若月佑美・斉藤優里。全員が『じょしらく』にも出演経験があり、卒業後も多くのメンバーが俳優業でポジションを築いている。伊藤は多くの映画で性格俳優として個性的な役を演じ、アーティストとしても才能を発揮。桜井はミュージカル、井上は小劇場をメインに存在感を見せている。 今クールの『セレブ男子は手に負えません』で連ドラ初主演の若月はどんな役もできるバイプレイヤーとして芸能界で不可欠な俳優になり、松村は実写映画化された『劇場版 推しが武道館行ってくれたら死ぬ』でのアイドルファン・えりぴよのようなエキセントリックな役でも印象を残している。 『セラミュ』『じょしらく』『すべての犬は天国に行く』は、いずれもネルケプランニングが企画を担った。同社は2.5次元舞台や小・中規模の劇場での多彩な内容の舞台を強みとしていて、新しいセラミュも舞台の規模感を活かした、臨場感ある演出が期待できそうだ。 5期生は加入後「プリンシパル」を経験せず、全員が生の舞台出演は初めて。『乃木坂スター誕生!』などで磨いてきた小芝居にコント、芝居の間合いの感覚を活かせる機会がやってきた。またセラミュが終わると、5月からは奥田いろはがミュージカル『ロミオとジュリエット』ヒロインのジュリエットという大役に挑戦する。セラミュをきっかけに、5期生にも演技のオファーが続いてくれることを望みたい。
大宮高史