イチローが野村克也氏の記録更新に素っ気なかった理由
イチローが野村克也氏の持っていた日本最多出場記録を更新した。田中将大が先発した9日のオリオールズ戦。2点を追うヤンキースは9回、無死一、三塁のチャンスを作ると、同点の一塁走者の代走としてイチローを起用した。この時点で、日米通算ながら、イチローの出場試合数は3018試合となり、野村氏が持つ3017試合という日本の最多出場記録を上回った。もちろん、日本と大リーグでは、試合数が違うので一概には比較できないが、野村氏が26年かけて作った記録を、イチローはプロ23年目のシーズンが開幕した直後に越えた。 ただ、前日8日の試合で途中出場して最多記録に並んだとき、そのことを伝えられたときのイチローの第一声は、「それ、何?」だった。改めて最多出場であることを伝えられても、「あっ、そう」。その程度のことなのか? 聞かれても、「だから、という感じですけどね」と素っ気なかった。イチローは言う。 「出ているだけでカウントされるものに僕は価値を見いだせないのでね。それに尽きるよね」 それが本意で、他意はないが、例えば、フル出場しても、代走でも、同じ「1試合」が加算される矛盾をも、暗に指摘していた。 確かに、スタメン出場して9回をプレイするのと、9回から出てきて、二塁ベースに辿り着く前に試合を終えるのとでは、意味合いが違ってくる。特に最近、イチローは、後者の起用が多い。そのもどかしさもどこか透けた。 もちろん、3018試合といえば、メジャーでもなかなかの数字である。メジャートップは、ピート・ローズの3562試合だが、3018試合は8位に相当する。3000試合を越えた選手も、試合数の多いメジャーと言えど、8人しかいないのだから、自ずとこの記録の難しさが知れる。しかし、そうはいっても、やはりメジャーで出場試合数が評価されているかと言えば、微妙なところ。35年以上大リーグを取材し、現在、「MLB.COM」のナショナルライターを務めるバリー・ブムーム記者もこう指摘した。 「最多安打、最多本塁打、最多盗塁、といった記録は、誰かが越えようとするたびに話題になる。しかし、最多出場試合数に並んだ、越えた、ということが注目されたことは記憶にない」 記録の価値についても、「評価そのものが難しい」と話す。 「もちろん、長く、ケガをすることなく、試合に出場することを求められる記録だけに、もっと認められてもいい。しかし結局、結果がすべてみたいなところがある」 出場を重ねたところで、何を残したか。問われるのはやはり、そこか。イチローの言わんとしていることも、近いのかもしれない。その一方で、イチローにしてみれば、この程度では、という思いもあるようだ。 「僕にとっちゃ少ないくらい」