新基準バットや朝夕2部制導入…岐路に立つ甲子園で東京勢が大躍進 年の瀬記者ノート
8月に甲子園球場で開催された第106回全国高校野球選手権大会は、史上初の決勝戦での延長タイブレークの末、東東京代表の関東第一が京都国際(京都)に惜敗して幕を閉じた。西東京代表の早実も16強入りし、都勢が存在感を示した。一方で、今年は高校野球界のさまざまな〝改革〟が注目を浴びた。都勢の熱戦を振り返りながら、岐路に立つ伝統大会の将来にも思いを巡らした。 【写真】3回戦進出を決め、応援スタンドに向かって駆け出す早実ナイン ■波乱の中で奮闘 選抜大会王者・健大高崎(群馬)、夏の優勝経験もある花咲徳栄(埼玉)といった有力校が大会序盤で姿を消す中、春夏連続出場となった関東第一は、堅実な野球で勝ち進んでいった。 投手陣はエース・坂井遼投手を筆頭に、タイプの異なる複数の投手を擁し、明徳義塾(高知)、東海大相模(神奈川)など全国屈指の名門校を封じた。また野手陣の鉄壁の守備も光り、準決勝の神村学園(鹿児島)戦では、飛田優悟中堅手の好返球が走者生還を阻止。「奇跡のバックホーム」として話題になった。 初優勝をかけて挑んだ決勝は、九回を終えて0-0の同点。延長タイブレークにもつれ込むも、あと一歩頂点には及ばなかった。「あと一本、勝ちきれなかったのが悔しい…」。決勝を終え、米沢貴光監督は無念さをにじませた。最後の打者となった坂本慎太郎選手は「3年生に迷惑をかけてしまった。心の弱さがあったと思う…」と悔やんだが、決勝まで圧巻の戦いぶりを見せた。 ■奇策でも注目 得点のたびに、えんじ色に染まった早実アルプスが揺れ動く-。その様子は、昨年夏の覇者・慶応(神奈川)を彷彿とさせる。大正4(1915)年の第1回大会から出場し続ける数少ない「皆勤校」の早実も、関東第一に負けじと2勝を挙げて躍進した。 鶴岡東(山形)との2回戦では2年生エース・中村心大投手が投打に躍動。10回を完封し、サヨナラ勝ちを決める適時打も放って激闘に終止符を打った。「こんなに成長した中村を見たことがない」。全国制覇も経験した名将・和泉実監督も、手放しで絶賛した。前の試合で13安打を放った宇野真仁朗主将を中心とする強力打線も健在で、競り合いの中で勝負強さを見せた。 大社(島根)との3回戦では、同点の九回裏、一打サヨナラの場面で、左翼手を投手の横に配置する「内野5人シフト」を敢行。打球は吸い寄せられるかのように左翼手の前へ転がり、〝奇策〟は成功した。延長十一回の激闘の末、試合には敗れたが、伝統校がセオリーにとらわれず、目前の勝利をつかもうと執念を燃やす姿には、記者も鳥肌が立つほど驚かされた。