人類は再び空の旅を楽しむ-燃料消費、新型コロナ禍前の水準に戻る
(ブルームバーグ): 今では、バカンスに出掛ける人たちを乗せた航空機がひっきりなしに上空を飛び交うようになった。うっすらとした白い飛行機雲と、悪夢のような新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)の思い出が交錯する。
世界では再び空の旅が盛り上がりつつある。ブルームバーグNEFがまとめた業界データによると、7-9月(第3四半期)には1050万便が空を飛ぶ予定だ。国際航空運送協会(IATA)は、今年は記録的な旅客数を見込む。座席はコロナ前と同程度に埋まり、記録的な量の燃料を使用すると予想する。
環境保護主義者にとっては、二酸化炭素排出量の急増や観光業の復活を意味する新たなシグナルとなるため、この傾向は落胆をもって迎えられるだろう。
一方、石油業界にとってはこの復活は歓迎すべきことだ。 石油輸出国機構(OPEC)と非加盟産油国で構成するOPECプラスはコロナ禍の初期から、供給抑制を余儀なくされてきた。ジェット燃料の消費は、他のどの主要石油製品よりもはるかに大きくそして長期にわたり打撃を受けた。
業界コンサルティング会社FGEの精製品責任者、ユージン・リンデル氏は、「人類は再び旅行をするようになった。パンデミックの年月から脱却しつつある」と語る。
特に急増が予想されるのは海外旅行だ。今年はアジア、欧州、北米で大幅に増加し、9.7%の伸びが見込まれている。アジア発の国際線は23%増となり、ほぼすべての地域でも大幅増となる見通しだ。
シンガポールのチャンギ空港の今年1-3月の旅客数は1650万人と、19年の水準を上回った。
とはいえ、世界最大の独立系石油商社ビトル・グループのアナリスト、サイモン・ウォーレン氏は、回復の原動力となっているのはより短距離の路線だと指摘する。同氏は、今年のジェット燃料需要は日量65万バレル増加すると予測している。
「世界のジェット燃料需要は、20年以来初めてコロナ前のレベルに戻っている。回復の主役は短距離路線。ジェット燃料は石油需要全体の伸びの主な原動力だ」と語った。