<近江・支える人>第96回選抜高校野球/中 堤整形外科の理学療法士 堀口幸二さん(54) けがのない青春ケア /滋賀
センバツ開幕まで約1カ月となった頃、近江の教室には選手ら一人一人に声をかけながら、体のコンディションをチェックしている理学療法士の堀口幸二さん(54)の姿があった。 【写真で見る歓喜の瞬間】歴代のセンバツ覇者たち 高校球児だった堀口さんは、けがで苦しんだ経験からコンディショニングの重要性を感じて高校を卒業すると岐阜県の専門学校で学び、理学療法士となった。現在は長浜市内の整形外科で日々、患者の体と向き合っている。2001年、夏の県大会で出場各校の選手の肩や肘のケアを担当。この際に当時、近江の野球部長だった伊東洋副校長らと交流が始まり、以来20年以上にわたって同校の選手らの体をチェックし、ベストな状態で試合を迎えられるよう努力する。 堀口さんは、大きな大会が近付くと同校を訪問し、選手一人一人に痛みや違和感などがないかを聞き取りながら体の状態を確認し、対処法を伝える。また、センバツが近くなりスケジュールの調整が付かず、選手らが病院などに行けない場合でも自分自身で体をケアする方法を教える。「バッティングのときに腰が痛くなる」という選手には、目の前でスイングをしてもらい「いつから痛みがあるのか」「どんな時に違和感があるのか」など具体的に聞き取り、体の動きから患部を探っていく。 更に寝た状態で背中の筋肉を触って状態を確かめ、股関節や腰など部位ごとに適切な動かし方のアドバイスを送る。助言を受けた選手らは継続的にストレッチなどをすることで大きなけがを防ぐことができる。 選手が万全の状態でプレーするには練習のみならず調整は重要な要素。時には練習量を見直すべき場面もある。近江OBでプロ野球・西武でプレーする山田陽翔選手は高校2、3年と甲子園でマウンドに立ち続け、途中でけがもあった。堀口さんは体の状態を見ながら「この大会で投げるためにも今は我慢しよう」と先を見据えたアドバイスで活躍を支えた。 選手の声に耳を傾け、力を発揮できるようコンディショニングの観点で支える堀口さんは「甲子園で悔いが残らないように、自分の体をケアしながら頑張ってほしい」とほほえんだ。【菊池真由】