新型アコードは実にホンダらしいスポーティなセダンだった!!! 乗ってわかった真の実力とは
日本でも発売が始まった新型「アコード」は、魅力的なセダンだった! プロトタイプを試乗した、大谷達也がリポートする。 【写真を見る】新型アコードの内外装など(58枚)
走りがイイ!
雨の伊豆サイクルスポーツセンターを新型アコードのプロトタイプで走る。 当日は雨量が多く、路面はぐっしょりと濡れていたが、そんなことはおかまいなしに、新型アコードは急な上り坂をグイグイと上り、ハードコーナリングを試してもタイヤが滑り出す気配さえ見せない。当日は比較用に旧型アコードも用意されていたが、こちらは加速感にキビキビしたところがなく、速度変化には全体的にモワーとした印象がつきまとう。絶対的なコーナーリング性能が新型に比べて大きく劣るとは思わないものの、それでもペースを上げていくと、前輪のグリップが抜け始める感触が徐々に伝わってくる。コーナリングの楽しさという面でも、絶対的なグリップ力や安心感という面でも、新型アコードが優っているのは明らかだった。 新型アコードには、シャシー性能を向上させる技術として「モーションマネジメントシステム」と「アダプティブダンパーシステム」が搭載されているという。 モーションマネジメントシステムは、“これからコーナーに進入する”と、クルマが判断したとき、軽い制動を行なって前輪により多くの荷重がかかる姿勢を作り出すことで前輪のグリップ力を高め、コーナリング時のクルマの安定性を向上させるもの。同様のテクニックは、上級ドライバーであれば日々当たり前のように用いているが、それをクルマ側が自動的におこなうことにより、幅広い層のドライバーにコーナリング時の安心感をもたらそうとするものだ。 もうひとつのアダプティブダンパーシステムは、4輪のサスペンションに取り付けられたダンパーと呼ぶパーツが生み出す減衰力をごく短い周期で電子制御することにより、クルマの姿勢を安定させるもの。どのように減衰力を調整するかは、従来、クルマの上下、左右、前後の動きを捉える3軸センサーからの情報をもとに判断していたが、新型アコードは、これらにくわえてピッチング、ローリング、ヨーイングというクルマの回転方向の動き(モーメント)も検出する6軸センサーを新たに採用することでボディの動きをより正確に検知し、これをダンパー制御に使うことで、よりレベルの高い姿勢安定性や良好な乗り心地を実現したという。 こうしたシステムの効果を個別に評価することは難しいが、新旧アコードを乗り比べて見ると、タイヤが路面を捉える能力だけでいえば、旧型アコードもかなり高いレベルにあることに気づく。 しかし、新型アコードでより決定的なのは、モワーっとした走りの旧型に比べて、はるかにキビキビとして小気味いいドライビングができることにある。おかげで、コーナリング中のテンポ感が大幅に速まって爽快感が高まるとともに、瞬間瞬間でコーナリングの限界を追求できるため、タイヤの性能をフルに引き出せるようになる。そしてこれが、クルマを操る喜びに直結していたのである。 では、なぜ新型アコードでよりキビキビした走りが楽しめるのか?と、いえば、それはホンダ独自のハイブリッドシステムである「e:HEV」が見直され、加速中にはギアボックスがシフトアップし、減速時にはシフトダウンしているかのようにエンジンの回転数が上下するため。これにともなってエンジン音の音色が上下する様は、まるでマニュアルトランスミッションのクルマを操っているかのよう。そんな聴覚からの刺激が、クルマを操る喜びに大きく結びついているのである。 もちろん、変わったのはエンジン音だけでなく、エンジンのピックアップも大きく改善され、アクセルペダルを強く踏み込めばグイッと背中を押されるような加速感を味わえる。その意味でいえば、モーションマネジメントシステムやアダプティブダンパーシステムの効果もさることながら、新型アコードに搭載されたハイブリッドシステム“e:HEV”の進化によるところが大きいといえる。 新型アコードとともにe:HEVがどのように進化したかについては、別項で詳しく紹介することにしよう。
文・大谷達也 編集・稲垣邦康(GQ)