『必殺仕事人』延長オファーを渋る三田村邦彦が藤田まことのアドバイスに感動「結局6年半やりました(笑)」
『必殺仕事人』シリーズの飾り職人の秀や、『太陽にほえろ!』のジプシー刑事をはじめとする人気ドラマで一世を風靡し、71歳となった現在も渋い二枚目俳優として活躍する三田村邦彦のTHE CHANGEとは――――【第4回/全4回】 ■【画像】三田村邦彦と丘みどりがデュエットした『おとな旅あるき旅』エンディング曲「あなたと、君と」 俳優を目指して家出同然に上京し、劇団青俳に入った三田村邦彦は、作家・村上龍が原作、脚本、監督の映画『限りなく透明に近いブルー』で主役デビュー。時代劇『必殺仕事人』にレギュラー出演するなど、順風満帆の俳優人生がスタートしたかと思われたが……。 「時代劇とはいえ、金をもらって人殺しをする役がイヤで、番組を降りようと思いました」 そんなとき、主役の中村主水を演じていた藤田まことが三田村に声をかけた。 「藤田さんは、ぼくのことを『ミーちゃん』と呼んでくださっていて、『ミーちゃん、なんでやめるねん?』と。そこで、人殺しの役はこれ以上続けられないと言いました。そうしたら、こんなふうに言ってくれたんです」
藤田まことの言葉に感動「すごいな、この人は……と」
――――ミーちゃんの思いは、わかる。現代に生きる俳優の三田村邦彦として、それは良くないことだと思うわけやな。でも、江戸時代で考えたらどうや? 役人が中間搾取したり、賄賂もらったりして悪いヤツがのさばってる。中村主水としては、許せん。けど、藤田まこととしては、金と引き換えに殺すのはやっぱり良くないと思う。だからおれは、中村主水は最後に、とてつもなく無様な死に方をするべきだと思ってる。そんな思いでやってるんだよ、おれは。 「すごいな、この人は……と感動しましたね。よし、自分も腹をくくってやりとげよう、と思ったら蕁麻疹は消え、プロデューサーに“あと3ヶ月やります”と言って、結局6年半やりました(笑)」 以来、三田村邦彦は、現代物も時代劇もできる俳優として、ドラマや映画に欠かせない存在となり、歌手としても活躍。6回目の年男となる2025年もすでに、さまざまな仕事が予定されている。 「ぼくが今、こうやっていられるのは、24歳で『限りなく透明に近いブルー』をやらせていただいたからです。あの作品をきっかけに、俳優の仕事だけでやっていけるようになったのですから。そして、(村上)龍さんをはじめ、ぼくが何かを断るたび、心に響く言葉をくれた人たちのおかげです」 人生に「たられば」は、ない。 しかし、もし村上龍が、三田村邦彦という無名の俳優にこだわらなかったら……。 もし、蜷川幸雄が「どんな役でもやって間口を広げろ」と怒鳴ってくれなかったら……。 もし、藤田まことが中村主水との向き合い方について語ってくれなかったら……。 改めて三田村に、もし『限りなく透明に近いブルー』に出演しなかったら……と尋ねたら、こんな答えが返ってきた。 「映画が公開された年に、所属劇団が倒産したので、違う劇団に入っていたのか、別の仕事に就いていたのか……いや、それはありませんね、やっぱり、俳優はやめられなかったと思います」 三田村邦彦(みたむら くにひこ) 1953年10月22日生まれ、新潟県新発田市出身。1979年に映画『限りなく透明に近いブルー』でデビュー。同年『必殺仕事人』(テレビ朝日)の飾り職人の秀で注目され、『必殺』シリーズのドラマ、映画に多数出演。1980年に『必殺仕事人』の挿入歌『いま走れ、いま生きる』で歌手デビューし、シングル・アルバムを多数リリース。俳優としての主な出演作は『必殺』シリーズのほか、ドラマ『太陽にほえろ!』(1982-1983 日本テレビ)、映画『太陽の蓋』(2016)、舞台『かたき同志』(2021)『アンタッチャブル・ビューティー』(2022)など。2009年より旅番組『おとな旅あるき旅』(テレビ大阪)のMCを務めている。 工藤菊香
工藤菊香