日本学術会議「任命拒否問題」の国賠訴訟が提起 「政府の説明責任」追求と「個人の名誉」回復を目的
「政府の説明責任」と「名誉の回復」
行政文書の不開示処分の取り消し(情報の公開)を請求する訴訟の原告は、弁護士や法学者ら166名(任命拒否された小澤教授、岡田教授、松宮教授も含む)。原告1人につき1万円の国家賠償を請求している。 提起後に開かれた会見で、福田護弁護士は「6名の任命拒否について、情報公開により政府の説明責任を果たさせる」「任命拒否の根拠・理由を明らかにする」ことが訴訟の目的であると説明した。 個人情報の不開示処分の取り消しを請求する訴訟の原告は任命拒否された6名。具体的には、各処分庁が原告らについて保有している個人情報の開示を求める訴訟となる。請求している国家賠償の金額は1人につき100万円。 こちらの訴訟にも、政府の説明責任を追及するという目的がある。また、6名は不当に任命拒否されたことで日本学術会議法17条に会員の資格として記載された「優れた研究又は業績がある科学者」という評価も否定されたことになるため、その名誉を回復することも目的としている。
任命拒否された教授たちの訴え
会見にて、行政法を専門とする岡田教授は「文書を黒塗りにするならきちんとした理由が必要になる。どこに宛てた文章かも隠されているのはおかしい。政府のなかでどういう経路を経てこういった判断がなされているのか、それを国民に対して説明する義務が政府にはあるはずだ」と語った。 加藤教授は、任命拒否の理由が明らかにされていないことに関して「会社が就職で志望者を断った時にその理由を明らかにすることはない、という説明がなされたが、それでは我々は就職に失敗した人と同じだということになる。これにはひどく傷ついた」と述べたうえで、「しかし、その説明は、思いのほか国民には通じなかった」と指摘。 世論調査で6~7割の国民が「国側の説明は不十分である」と答えたことにも言及しながら「任命拒否の不当さは国民感情としても理解されている」と加藤教授は語った。 小沢教授は「政府には任命の権限があるが、自分たちの行った任命行為について、一切の説明責任を果たしていない状態。本来なら自分たちが守るべき法律を守っていない。悪しき事例として明らかにしていって、国民と国家権力との約束である憲法がゆがめられている実態を示していく。政府の説明責任を果たす前提を作るための訴訟だ」と、意気込みを示した。
弁護士JP編集部