スマホ不正疑惑で正念場の将棋界 「電王戦」にも余波
将棋ソフトの不正使用疑惑をめぐり、揺れに揺れた将棋界。第三者委員会の調査で、「不正の証拠はなかった」と結論づけられたことを受け、日本将棋連盟の谷川浩司会長(十七世名人資格保持者)が辞任に至る事態になりました。今春に予定されている棋士代表とソフト代表が対決する「電王戦」は、棋士側から現役名人が登場することが決まっており、本来は大きな盛り上がりが期待されるはずですが、一連の騒動を受け、将棋ファンも複雑な思いで見つめています。 【会見動画】将棋連盟・谷川会長が辞任発表「三浦九段に誠意を」
「もっと早く手を打てば……」陳謝
今回の疑惑は三浦弘行九段をめぐって、複数の棋士が対局中の離席が多く、長いという疑念を指摘し、定跡を外れた後の指し手もソフトと一致率が高いことからソフトを使用したのではないかと疑惑がもたれました。しかし、調査を行った第三者委員会は昨年12月、三浦九段のスマートフォンなどから不正行為を裏付けるものはなく、指摘された離席の長さも根拠とはならないなどとして、不正の証拠はないとしました。 一方で、三浦九段は疑惑をもたれたことで、挑戦者に決まっていたタイトル戦「竜王戦」に出場できない状況となり、同戦は二位だった棋士が繰り上げで挑戦。「不正なし」とされながらも、竜王戦はすでに進行している事態になっていました。こうした問題を受け、谷川会長は自身の体調不良なども理由に会長を辞任しました。辞任会見で谷川会長は「もっと早い段階で手を打っておけばこのような大きな問題にならなかったかもしれない。責任を感じる」と陳謝しました。 谷川会長の辞任について元「週刊将棋」編集長の古作登氏(大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員)は、「数か月公式戦を指せないという状況を作ってしまったのはやはり問題で、辞任も致し方ない」と指摘。「今後もファンがおかしいと思わないような情報開示をしなくてはいけない。新執行部は第三者も含めた検証委員会を設置し、さらに説明していく必要がある」と話します。