『東京タワー』原作者・江國香織が永瀬廉&板谷由夏と鼎談「私の小説にはモデルがいないので、初めて実物に会えたような気持ち」
永瀬廉(King & Prince)が主演を務める、オシドラサタデー『東京タワー』(テレビ朝日系 毎週土曜 午後11時~11時30分)の原作者・江國香織が撮影現場を訪問し、永瀬、板谷由夏とのスペシャル鼎談が実現した。 【写真】『東京タワー』原作者の江國香織 永瀬廉を主演に迎え、江國香織の伝説の恋愛小説「東京タワー」を日本で初めて連続ドラマ化。永瀬演じる21歳の青年・小島透と、20歳以上年の離れた人妻・浅野詩史(板谷由夏)の美しくも許されない愛。そのはかなく甘美な世界を、現代の東京の最旬スポットを舞台に、令和という新しい時代ならではのストーリーとキャラクターで大胆に描き出していく。 ドラマの撮影開始からしばらくたった某日、麻布台ヒルズ展望フロアで行われていた撮影の現場を原作者・江國香織が訪問。撮影の様子を見学した後、東京タワーをバックに永瀬、板谷とのスペシャル鼎談(3人での対談)が行われた。 なお、江國が撮影現場を訪れた麻布台ヒルズでのシーンは、5月4日(土)放送の第3話に登場する。現在、TVerでは『東京タワー』第1、2話を無料見逃し配信中。 <原作者・江國香織×永瀬廉×板谷由夏 鼎談コメント> ◆今、この時代に『東京タワー』を連続ドラマ化すると聞いて、どう感じられましたか? 江國:すごくびっくりしました。(「東京タワー」を)書いたのがすごく前だということだけでなく、今って倫理的なことなども厳しい世の中ですし、若い方々が恋愛にあまり興味のない時代だと聞いていたので、どうして今これをドラマ化するんだろう、と不思議な気がしました。 永瀬:許されない恋、っていうのがやはり大きな軸になってくる物語なのですが、“湿度”をそこまで感じない、だからこそすごく読みやすかったです。紡がれている言葉もすごく綺麗で、読んでいて情景が頭に浮かんで、ストーリーがスッと入ってくるんですよね。 板谷:私はまさに20代のときにリアルタイムで読んでいたので、まさか自分が『東京タワー』で詩史を演じることになるなんて思ってもいませんでした。読み返してみてあらためて思うのは、人と人が惹かれ合う恋愛の根っこの部分って年齢を重ねたからこそ分かることもあるということ。最初に読んだときと感覚が違うな、って思ったんですよね。あ、年齢を重ねるのも悪くないな、って。当時20代の頃はきっと詩史に当てはめては読めなくて、どちらかというと透くんに自分を置き換えていた気がするけど、今となっては大人が持つ切なさや焦りや、そういった感情を当事者として感じることができるので、あぁ小説って時代とか時期によって全然違うものなんだなって思いましたね。 永瀬:透や詩史といった登場人物のモデルになった人っていうのはいるんですか? 江國:いないんです。私の小説の人物はどれもモデルがいなくて…。だから今日撮影現場を見させていただいて、初めて実物に会えたような気持ちがしています(笑)。 板谷:大丈夫でしたか?私たち…。 江國:はい、もう…美しかったです。小説って、言葉には肉体がないですから、ある意味なんでも自由に書けますし、読む人も自由にイメージできますけど、生身の肉体を持った役者さんたちが“演じる”というのはすごく大変だろうな、って思いました。でも本当にお2人が美しかったので、ますます楽しみになりました。 板谷:江國さんは東京タワーお好きなんですか? 江國:好きだって思ったことはあまりなかったかな…。私が生まれるよりも前からあって、好きとか嫌いとか考えたこともなかった。でも30歳を過ぎた頃くらいから、タクシーに乗っているときなんかに東京タワーが見えると“あ、東京タワーだ”って言っちゃう自分がいることに気がついて、もしかして好きなのかな、って気がついたんですよ。 板谷:どうして詩史には“(東京タワーは)苦手よ”って言わせたんですか? 江國:どうしてだったんだろう…(笑)。はっきりは覚えてないけど、“東京タワーが好き”って言うのってなんだかカッコ悪いような気がしてたんじゃないかな…。でもそれは好きの裏返しかも。東京タワーって、ずっと同じ場所に立っているけど、寂しく見えたり、悲しそうに見えたり、ハッピーに見えたり、本当に見る側の心情によって見え方が違うんだろうなって思うんです。 ◆「(東京タワーが)苦手よ」という詩史さんのせりふしかり、永瀬さんと板谷さんにとって印象的なせりふはありますか? 永瀬:「詩史さんはいつだって一瞬にして僕を幸福にするんだ」――透の真っすぐさ、ピュアさが表れていて、どんどん詩史さんへの思いが高まっていくのが感じられて好きです。 板谷:私は「人と人は空気で惹かれ合う」というのがすごく好きです。なんとなく恋愛したり、恋したりすると、その感覚は分かるけど、ちゃんと文章になってみると、あらためて、はっ!としました。そうか、“雰囲気”じゃなくて“空気”か、と。 江國:それ、うれしいです。 永瀬:あと、もう少し話が進んだところで透が詩史さんに言われる言葉もあるんですけど、それは決してイヤな言葉ではないはずなのに、透にしてみたらすごく心をえぐられるというか…。だから読んでいて印象に残っています。 江國:切ないですよね…(笑)。 永瀬:そう、詩史さんは…本当にひどいです(笑)。 江國:たしかにひどい!(笑) 板谷:(笑)。 永瀬:このドラマでは透目線で話が進んでいくので、見ている方々にも透の立場から物事が見えていると思うんです。詩史さんが本当のところ何を考えているのか深くは分からないという中で、こんなこと言うんや、こんな態度するんや、と透がかき乱される感じがすごいんです! 江國:私も書きながら、ひどいなと思ってましたよ(笑)。でも一方で、女性2人(詩史、喜美子)はやっぱり切ないでしょう? 大人としての葛藤や相手への思い…今回の脚本を読ませていただいて、そういう部分も強く描かれているな、って思いました。 ◆今回のドラマではそういった青年たちの自立や成長といった部分もテーマになっていて、そこも江國さんの原作とは1つ違った部分かと思いますが、そのあたりはいかがですか? 江國:すごく新鮮だと思いました。小説を書いたときには、どちらかというと女性2人のどうしようもなさ、切なさをメインに描いていて、男性2人の方はちょっと野放しにしていた感じがあったので、今回はそちらにフォーカスされていて、新鮮でした。すごく面白いと思ったので、もしもドラマを見て小説を読んでくださる方がいたら、合わせ鏡のように楽しんでいただけるのではないかと思います。 永瀬:透だけではなく、耕二も物語が進むにつれて成長していく気がします。透にとっても耕二の存在は大きく、真逆の描かれ方をしていく2人ですけど、同じことで悩んだり、悲しんだりしながら、より絆が深まっていくような気がしています。 江國:透と詩史、耕二と喜美子がどんな物語を描き出してくれるのか、とても楽しみですし、今日撮影の様子を見せていただいて、ますます楽しみになりました!
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