地震被害軽減する「家族の命守れる家」目指す熊本の住宅メーカー 請け負う全住宅の地盤に免震構造施す工法採用
地震による家屋被害を防ごうと、住宅メーカーのTAKASUGI(タカスギ)(平島孝典社長、熊本市)は、請け負う住宅すべてで地盤に免震構造を施す取り組みを始めた。熊本地震後、客の要望があればオプションとして採用してきたが、能登半島地震による被害の深刻さを再認識し「何があっても家族の命を守れる家づくり」を目指すという。 【図解】免震と液状化の仕組み 同社は熊本、福岡、佐賀各県で注文・分譲住宅の建築販売を手がけている。熊本地震で震度7が2度観測され被害が集中した益城町で、2000年に強化された耐震基準で建てられた家屋でも倒壊したケースがあったことを重視。一方、無傷で家具もほとんど動かなかった木造2階建てがあり、宅地の地盤に免震機能を持たせる工法が用いられていたことが分かり、同社も採用することにした。 一般社団法人「地盤対策協議会」(東京)が開発したスーパージオ工法と呼ばれる技術で、狙いは軟弱地盤の対策。環境に配慮した樹脂製資材「スーパージオ材」を敷いた上に住宅基礎を築く。地下水位が高く液状化の恐れがある土地では内部に空洞があるタイプを用い、地震で流動化した水を一時ためることで、液状化を抑制できるという。 この資材は揺れを吸収する緩衝材の役目も果たす。寺社建築などで採用されてきた「石場(いしば)建て」と呼ばれる伝統構法に通じる考え方で、地盤の揺れを建物に伝えにくくすれば被害を軽減できるというわけだ。 阪神大震災など過去の地震と同じ揺れを再現した実験では、縦揺れで約10%、横揺れで約40%の軽減が確認されたという。同社は低層住宅に適していると判断。能登半島地震を踏まえ2月、全受注物件で標準装備とする方針を決めた。 工費は平均的な木造2階建てで150万円前後のアップとなるが、地震で家屋が万一損傷した場合は修復費用などを同社側が全額負担する補償の仕組みを整えた。畑崎安成副社長は「私たちが作る家では、誰一人として命を落とすことなく地震後も安心して住み続けられるようにしたい」と話している。 (長谷川彰)