全国交通系ICカード、熊本県の5社が廃止…路線バスや熊本電鉄「12億円」システム更新費の捻出困難
熊本市内を運行する熊本市電も26年4月で、全国交通系ICカードによる決済を廃止する方針を示している。ただ、5月の発表後、市議会などから反発が上がったことから、現在は廃止、存続、簡易型システムへの変更と3案を示し、市民へのアンケート調査を実施するなど再検討を進めている。
同市公共交通協議会の会長を務め、交通問題に詳しい熊本学園大の坂本正名誉教授(金融制度論)は、JRで全国交通系ICカードの決済が維持されることに触れ、「県内の公共交通機関の決済方法がバラバラで、利用者が不便になるのは明らか。事業者だけでなく県や市も積極的に関与して公共交通としてのあり方を議論するべきだ」と語った。
クレカ決済、31都道府県の133事業に増加
クレジットカードのタッチ決済は、全国の公共交通機関でも導入が進んでいる。
システムを提供する三井住友カードによると、導入数は2020年は5事業だったが、今年10月末時点で31都道府県の133事業に増加。九州・沖縄では、福岡、佐賀、熊本、鹿児島、沖縄5県の28事業で取り入れ、今月20日からはJR九州が大分県内の一部駅で開始する。
福岡市地下鉄では、22年5月からの実証実験を経て、今年4月に本格導入した。当初数百人だった1日の利用者は現在、約1万5000人だが、約50万人の乗客全体の1割に満たない。乗客の9割は「はやかけん」など全国交通系ICカードで決済しているという。
市交通局の担当者は「現状で、ICカードからタッチ決済に切り替える乗客はあまり見られない。更新費用の負担は大きいが、今後も全国交通系ICカードを維持していく」としている。