カーボンクレジットのクリマDAO、日本で取引サービスを4月に開始へ──政府運用の「Jクレジット」に対応
長崎・西海市と連携:クレジット、NFT、メタバースをフル活用
Jクレジットのトークン化とマーケットプレイスの運営に加えて、濱田氏率いるクリマDAOジャパンが日本市場で進めるもう一つの取り組みは、石油会社や電力会社、メーカー、自治体などに対して、カーボンクレジットを創出するプロジェクト開発を支援する事業だ。 一般の市民も参加できるような仕組みを設けて、企業・人・行政のすべてのステークホルダーが参画できる温暖化ガス削減プロジェクトに仕立てていきたいと、濱田氏は話す。 実際、クリマDAOジャパンは昨年、「ゼロカーボン」を目指している長崎県西海市と連携し、プロジェクトの設計作業を始めた。検討段階ではあるが、西海市内でJクレジットとして認証されるカーボンクレジットを創出するプロジェクトを作り、トークン化したクレジットをクリマDAOジャパンのマーケットプレイスで取引できるようにする。 地元企業で、AIやWeb3技術を得意とする西海クリエイティブカンパニー社(SCC)とも組み、カーボンクレジットを紐づけるNFTを発行し、メタバースの中で個人が取得できる仕組みを作る。NFTには特典を付け、個人が気候変動に対応した行動を楽しみながら行える環境を、リアルとメタバースを併用しながら整備していきたいと、濱田氏は構想を話す。 また、クリマDAOジャパンはゲーム開発会社などと、カーボンクレジットをゲームに利用できる仕組みについての意見交換も進めている。 「個人の活動が間接的に温暖化ガスの排出につながり、それを自らカーボンクレジットを利用してオフセットしようとする考えは、特に欧州などで多く聞かれるようになってきた。個人が気候変動に対して積極的に対応しようとする動きは、今後日本や他のアジア諸国でも強まっていくのではないだろうか」(濱田氏) グローバルに事業を展開する欧州、米国、日本などの大企業は、「ゼロカーボン」や「カーボンニュートラル」を経営ビジョンの1つに据え、カーボンクレジットの利用を拡大させている。 次の10年で著しい経済成長が見込まれるグローバルサウスのアフリカでは、熱帯雨林やマングローブ湿地帯といった天然の「カーボンシンク(二酸化炭素の吸収源)」がカーボンクレジットという新たな資源として注目されるようになった。アフリカの各国政府は、カーボンクレジットから得られる収入の使途を巡って、新たな法整備を進めようとしている。 国内では、東京証券取引所が昨年10月にJクレジットを売買する取引所を開設すれば、金融サービスからデジタル資産の関連事業を手広く行うSBIホールディングスは、アスエネ社と共同でカーボンクレジット取引所「Carbon EX」を立ち上げた。 「雨後の筍」のようにカーボンクレジットを生むプロジェクトと、それを取引する市場は世界中で増えている。果たしてクリマDAOジャパンは、日本の法人と個人を惹きつけるマーケットプレイスを生み出すことができるだろうか? |インタビュー・文:佐藤 茂|写真:クリマDAOジャパン代表の濱田翔平氏(撮影:小此木愛里)
CoinDesk Japan 編集部