【インタビュー】LL・クール・J、11年ぶりの新作に込めた「ヒップホップへの愛」
「ロックの殿堂入り」も?!
「当時ハーレムでつるんでいた連中のスタイルをまねた。あれは俺の発明ではないが、世間に広めたのは俺だ」と、彼は振り返る。 「RUN DMCのジャム・マスター・ジェイは俺のチェーンを見て、もっと太いのを買った。彼らの『マイ・アディダス』は俺の『アイ・キャント・リブ・ウィズアウト・マイ・レイディオ』にインスパイアされた曲だ。RUN DMCは特別に好きなグループだから、愛を込めてこういう話をさせてもらう」 さらにLLは続ける。「『素晴らしき哉、人生!』を見たことはある? 俺がいなかったらヒップホップ界は衝撃的に違っていたはずだ」と言って笑う。引き合いに出した1946年の映画では自殺しようとする主人公の元に天使が訪れ、彼が世界に及ぼした影響の大きさを教える。 「だが自慢話は控えることにしている。そういうのはもうやりたくない。俺はただ感謝で胸がいっぱいなんだ」 パーティーでもラジオでも引っ張りだこのヒットを連発し、プラチナアルバムを次々と放ち、LLはヒップホップ界で正真正銘のスターとなった。さらにはロックの殿堂入りを果たし、文化・芸能への貢献をたたえるケネディセンター名誉賞にもラッパーとして初めて輝いた。 こうした音楽界での栄冠の数々は、ハリウッドでの成功を後押しした。LLは、85年のデビューアルバム『レイディオ』のリリース直前に、映画『クラッシュ・グルーブ』にカメオ出演して以来、映画やテレビドラマに数多く出演してきた。 それも名優アル・パチーノとジェイミー・フォックス主演の映画『エニイ・ギブン・サンデー』や、超人気の犯罪ドラマ『NCIS:LA~極秘潜入捜査班』など、一流の作品ばかりだ。俳優以外にも、グラミー賞授賞式の司会を5年連続で務めたり、セレブがヒット曲の口パク演技を競う番組『リップシンクバトル』の司会なども務めてきた。 大物ラッパーが多数協力 テレビや映画に出演するようになると、音楽活動は事実上休止するラッパーが多いが、LLは違う。 2016年には、ラップ界の大御所ドクター・ドレーのビートに合わせて、フリースタイリングを披露する動画を発表。以来、ドレーとは30~40曲を共作してきた(ただし自分の担当部分の仕上がりには満足していないという)。 新作『THE FORCE』は、「真にクリエーティブなエネルギーの周波数」という意味が隠されているという。実際、歌詞を見れば、これまで最高傑作とされてきた90年の『ノック・ユー・アウト』以来の力作となっている。