独代表は「別レベルに上がると思う」 同僚が絶賛…母国開催EUROで期待大“悪夢払拭”のキーマン【現地発コラム】
EURO前最後の親善試合は0-0もクロースは手応え「以前の時期ほど悪くはなかった」
0-0の引き分けで終わった6月3日の国際親善試合ウクライナ戦はどこか消化不良感があったため、CL決勝出場組のFWニクラス・フュルクルク、DFニコ・シュロッターベック(ともにドルトムント)、DFアントニオ・リュディガー(レアル)、そしてクロースが合流した本大会前最後の親善試合となる同月7日のギリシャ戦では、プラスαの変化が期待された。本大会開幕前の前哨戦だ。スタジアムの雰囲気はとても素晴らしい。 ただ「劇的なバージョンアップで快勝」といかないところがサッカーの難しさでもある。前半はむしろウクライナ戦よりも低調な出来。ギリシャのハードマークに苦しみ、不要なボールロストからピンチを連発。リュディガーとクロースとで上手くいかない試合展開を好転させられたかと言えばそれもない。 後半、選手交代を生かして試合の流れを掴み、逆転勝ちしたことはポジティブとはいえ、キッカー誌は「試合には勝ったが、勇気をもたらすパフォーマンスではない」と論じ、記者会見での「前半はボールロストが多く、カウンターを許してしまった。ボールを動かすテンポも運び方も悪かった。後半修正はできたが」というユリアン・ナーゲルスマン監督の言葉もどこか歯切れが悪い。母国開催というプレッシャーがそこにはある。 だからこそ経験豊富なクロースの言葉が意味を持ってくる。試合後のテレビインタビューで正直に自分たちのパフォーマンスについてこのように振り返っている。 「サッカーでは上手くいかない前半や後半になることもある。3月にできていたほど自分たちが良くなかったことも分かっている。ミスが多かったし、少しゆっくりプレーしすぎた。でもそれ以前の時期ほど悪くはなかった」
母国開催EUROで優勝へ、クロースの決意「僕はいつでもタイトルを勝ち獲りたい」
いつでも思いどおりにサッカーができるわけではないことを、クロースは熟知している。ドルトムントとのCL決勝でも前半は完全に劣勢だったが、それを受け入れ耐えて、ハーフタイムに修正して勝利につなげるしたたかさがあるから優勝できた。 「僕はいつでもタイトルを勝ち獲りたいと思っていた。サッカーを始めた時からそうだよ。どんなタイトルも僕にとって大事なんだ。CL優勝はその中でも最大のものの1つ。ポジティブにスタートしたいね。ドイツが国際大会でいい形でスタートできた最後の大会は2016年EURO。あの時はそれなりの結果を残すことができた(ベスト4)」 今大会後に現役引退を表明しているクロースの意欲が衰えることない。「目標は優勝」と明言する強靭な勝者のメンタリティーを持つクロースとともに、ドイツは再びしたたかさを身に付けることができるだろうか。 注目のスコットランドとのEURO開幕戦は、いよいよ現地時間6月14日(日本時間15日4時キックオフ)に迫っている。 [著者プロフィール] 中野吉之伴(なかの・きちのすけ)/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。
中野吉之伴 / Kichinosuke Nakano