名字と名前で分ける封じ手の割り印「佐々木」「勇気」の新手、受け取った王者は動揺…「藤井」「聡太」の分割サインがよぎる[指す将が行く・竜王戦第1局後編]
第37期竜王戦七番勝負第1局は藤井聡太竜王が佐々木勇気八段に先勝した。タイトル戦初登場ながら、佐々木八段は食事やおやつの「ダブル注文」で棋士らの度肝を抜き、封じ手封筒への割り印となるサインでは「佐々木」「勇気」と分割する新手を披露した。封筒を受け取った藤井竜王はポーカーフェースを貫いたが、内心は動揺していて「分割案」に傾いた瞬間もあったという。(デジタル編集部・吉田祐也) 【特別動画】佐々木勇気八段の天真爛漫バスケットボールの一日
種類豊富な食事・おやつ、メニューを前にうれしい「長考」
竜王戦で挑戦権を獲得した日から第1局を迎えるまで「あっという間」だったという佐々木八段は開幕局の対局者控室で「もう、ここにいるのか」と不思議な感覚だったという。
対局前日、東京・渋谷のセルリアンタワー能楽堂の楽屋で佐々木八段は「長考」に沈んでいた。スタッフから渡された食事とおやつのメニューを眺めながら「種類が豊富。どれにしようか」「2日目の食事やおやつは形勢にもよります。食欲が違いますから。うーん、決めきれない」と話していた。タイトル戦の空気に包まれていた挑戦者は「うれしい悩み」を満喫していた。
おやつダブル注文の「新手」、中村太地八段「若いなあ」
第1局は藤井竜王が先手となり、佐々木八段は角換わりを受けて立った。研究が進んでいる戦型で、初日の午前はスラスラと駒が動く。開始1時間でおやつの時間を迎えた。佐々木八段は「新手」を用意していた。シュークリームとメロンショートケーキの「おやつダブル」を注文したのだ。食事の2人前注文は大食漢で知られる丸山忠久九段の例があるが、おやつのダブル注文は珍しい。
中村太地八段が能楽堂の控室に到着し、佐々木八段のおやつダブルを知ると、目が点になっていた。注文カードを眺めた中村八段は「エンジョイしていることが伝わってきます。初めてのタイトル戦とは思えません。自分は緊張してばかりだったので」と話した。能舞台を映すモニターでは、挑戦者が席を外していた。おやつは楽屋に出される。「佐々木八段は、完食するのでしょうね。若いなあ」と笑った。
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