孫は節度ある応援姿勢を求めた(C)Getty Images

　17日間にわたって行われたパリ五輪が閉幕した。 　各国アスリートの胸おどるプレーに加えて、様々な話題が飛び交う中、今回深刻な問題として顕在化したのは選手たちに対する、SNSを含めての誹謗中傷問題だった。 　 　日本では柔道の阿部詩が早期敗戦で号泣したことを受けて、SNSでし烈な声が沸き起こった。本人がSNSで謝罪までする事態となったが、日本オリンピック委員会（JOC）も今月1日、「侮辱や脅迫などの行き過ぎた内容に対しては警察への通報や法的措置も検討する」と声明を発表するに至った。声明の中では選手が「心ない誹謗中傷、批判などに心を痛めるとともに不安や恐怖を感じることもある」としている。 【画像】エアコンなしの質素なデザイン？ パリ五輪選手村の全容をチェック 　また、同じアジアの中国でもお家芸卓球をめぐって、誹謗中傷問題が深刻化していることが改めて注目された。 　8月3日に行われた卓球女子シングルス決勝戦。東京五輪とまったく同じ組み合わせとなったベテラン陳夢と孫穎莎との対戦では4－2で陳夢が2大会連続の金メダルに輝いた。 　大ベテランの陳の冷静なプレーが光り世界ランク1位の孫を退けるという白熱の展開となったが、まさかの出来事が起きたのは試合直後のことだった。 　決勝では孫の熱狂的なファンが目立ち、異様なムードが試合中から漂う中、観客席に向かって手を振り挨拶する陳に向かって前方にいた女性が中指を立てるしぐさをしたのだ。このときの写真や動画はSNSを通じてあっという間に拡散。その後、中国のSNS「ウェイボー」でも陳に対し、「地獄に落ちろ」「全国民の夢をぶち壊した」など中傷の声が大きくなったとされる。 　その後、北京市公安局は6日、当該の試合に出場した選手たちをSNSで誹謗中傷し「社会に悪影響を与えた」として、29歳の女を拘束したと発表した。 　誹謗中傷が大きな社会問題となる中で、当事者である孫も声を上げた。 　今大会、混合ダブルス、団体で金メダル、女子シングルスで銀メダルを獲得した孫は、自身のウェイボーを更新。「2度目のオリンピックの旅、開幕戦から閉幕戦まで、最後の瞬間まで国技の名誉を守るために戦った」として、支えてくれた家族やファンに感謝の気持ちをのべた。 　その上で注目を集めた女子シングルス決勝で敗れた陳夢に対しても言及。 　「女子シングルス連覇の陳夢選手、おめでとう。あなたの努力とプレーは見習うべきものだ！」とチームメートでもある陳を強くたたえた上でこう続けた。「同時にみなさん、勝ち負けを理性的にとらえ、これからも中国卓球を応援してください！」と、ファンへ節度ある応援姿勢を求めたのだ。 　中指を立てた女性まで現れた女子シングルス決勝では孫のファンが多く会場入りし、ベテランの陳に対して、し烈な声が飛び交うなど、異様なムードともなっていた。 　アスリートを守るためにも健全なネット環境の確立、相手を誹謗中傷することなく、互いを認め合う応援姿勢など、4年後のロス五輪に向け、大きな注目が集まる国際大会の引き続きの課題となりそうだ。 ［文／構成：ココカラネクスト編集部］