「母乳バンク」国内で取り組み始まって10年 ドナーミルク導入施設全国103カ所まで普及も7県ではゼロ
◆◆「何かできることはないか」◆◆
鹿児島市立病院は今年3月、県内で初めてドナーミルクを導入した。新生児内科の大橋宏史医師は「母乳バンクの知識はあっても、スタッフ教育や親への説明など業務も増えるため、なかなか導入に至らなかった」と振り返る。 年間1~2人だった壊死性腸炎にかかる赤ちゃんが22年度に6人と急増し「何かできることはないか」と医師たちで議論し、導入を決めた。他病院の視察や予算の確保、院内倫理委員会の審査を経て、運用を始めるまでに約1年半かかったという。大橋さんは「効果はまだ把握していないが、他病院の事例から期待している」と話す。 ドナーミルクを使うには、量に応じた年間契約料を払う必要がある。そもそも対象となる極低出生体重児の数が少ないため、導入するには施設にとって労力の負担が大きいことや費用対効果が低いこともハードルになっているようだ。両バンクの代表を務める昭和大医学部の水野克己教授は「粉ミルクと同じように『入院時食事療養費』を算定すれば、病院の負担は少ない。全国どこでも使えるように普及に尽力したい」と話している。 (新西ましほ)