税金を投入する価値ある?万博会場を歩いたら思ってもみない「声」が聞こえてきた 大屋根は「断片」、広がる更地…「国民不在の国家プロジェクト」
今回は取材のため特別に通過することができたが、トラブルがあった場合や、工事がピークを迎えて一度に大量の作業員が出入りすることを考えれば、むしろ混雑の原因となるのではないかという懸念もよぎった。 ゲートを抜けると、いよいよ会場予定地が見えてきた。思いの外、作業員はまばらだ。「東側には大阪メトロ中央線の夢洲駅ができます」。東ゲート付近を歩きながら、大林組担当者が説明する。東ゲートは主に電車利用の来場者の入り口となり、会期中のメインエントランスとなる。 パイプでできたフェンスで左右を挟まれた道を歩いて行くと、右手に大阪府と大阪市が出展する「大阪ヘルスケアパビリオン」が見えた。足場が高く組まれ、輪郭が現れつつある。海外勢に比べると、作業は進んでいるようだ。 ▽ヘルメットがずり落ちる 「オーライ!」「ピーッ、ピーッ」。歩を進めると、作業員のかけ声や資材を持ち上げる機械音が響く。広さは東京ドーム約34個分。目を凝らすと、手前に二つ、はるか先には等間隔に三つ、リングとおぼしき構造物が見えてきた。
完成すれば世界最大級となる木造建築物で、会場を取り囲むように設置される。上からの写真で見ると「切ったバウムクーヘン」。実際に地上から遠目で見てみると木材同士の隙間が目立ち、頼りない印象だ。ところが近づくとその印象は大きく変わる。 隣にいた記者のつぶやきが聞こえた。「これはすごい」。木々を組む工法は梁(はり)が柱を貫く「貫(ぬき)接合」。京都・清水寺の「清水の舞台」と同じ技法だ。丈夫で腐りにくいオウシュウアカマツとヒノキからなる集成材の柱で、太さは記者の肩幅ほど。地面からぐんと伸び、触ると木の温かみが手のひらに伝わる。 屋根の下に入ると、縦横無尽に交差した木材は幾何学模様のようだ。天井は3階建てビル程度の高さにあり、見上げる度にヘルメットが後ろにずり落ちた。建造物としての威容に圧倒される。国会論戦では「世界一高い日傘」や「熱中症対策のための日よけ」といった表現を耳にしたが、実物はそのどれにも当てはまらない印象を受けた。