「助浴員」が新しい職種に登録、さらなる雇用支援に期待
【東方新報】介護が必要な高齢者の入浴問題を解決するために、「老年助浴員」という職種が誕生した。7月31日、中国人力資源社会保障部が発表した新しい職業情報によると、老年助浴員は介護職の一部として新たに登録された。これにより、業界の従事者たちはさらなる雇用支援を期待している。 7月31日、人力資源社会保障部は国家市場監督管理総局および国家統計局と共同で19の新しい職業と28の新しい職種を正式に発表した。その中で、老年助浴員は介護職の一部として新たに国家職業分類に登録された。 在宅介護のニーズに応えるために、また、介護が必要な高齢者が安心して入浴できるようにするために、老年助浴員という職種が生まれた。工人日報(Workers' Daily)の取材によると、老年助浴員の仕事は数年で急速に広がり、専門的な技能と独自の役割が求められるようになってきた。 ■専門的なサービスで高齢者の入浴をサポート 「こんなに気持ちよくお風呂に入ったのは久しぶりだわ。とても新鮮な体験だった!」8月19日、北京市豊台区に住む徐(Xu)さんは、初めて助浴サービスを体験した際の感想をこう語った。ここ2か月、転倒して動けなくなった80歳を超える徐さんはベッドで寝たきりで、なかなかお風呂に入れずにいた。徐さんの息子はすでに60歳で体力も限られており、自分で母を入浴させるのは難しく、プロにお願いすることを考えていた。 そんな中、7月31日に北京の家政会社から2人の助浴員が徐さんの家を訪れた。彼らは到着後すぐに消毒を行い、入念に準備を進めた。血圧計や体温計を使って徐さんの健康状態を確認し、その結果を家族に確認してもらった。二人の助浴員は協力して特製の浴槽を設置し、徐さんをゆっくりとお湯に入れた。「水は胸を覆わないようにし、またお湯の温度を夏は37度、冬は40度に調整して、徐々に慣れてもらうようにしています」と助浴員の一人が説明した。 初めて見知らぬ人に手伝ってもらう入浴に、徐さんは少し恥ずかしがりながらも新鮮さを感じていた。助浴員は一人が髪を洗い、もう一人が体を洗うなど、非常に細やかなサービスを提供した。「助浴サービスには通常2~3人が参加し、必ず男性が一人含まれます。女性には女性が、男性には男性が担当し、特に丁寧に洗うことが求められます」と彼らは話す。 このような専門的なサービスを提供することで、助浴員は介護が必要な高齢者とその家族の問題を解決しており、1人っ子として介護に悩んでいる多くの人たちにとって大きな助けとなっている。 ■老年助浴サービスがさらに普及 上海財経大学(Shanghai University of Finance and Economics)の蘇熠慧(Su Yihui)教授は、産業の発展は労働分業の細分化と共に進むもので、新しい職種が登場することで市場のニーズがさらに細かく対応されるようになっていると述べる。「例えば、産後ケアや育児ケア、高齢者の介護といったサービスがそれぞれ専門的に提供されるようになってきています」と話す。人びとの衛生や高齢者の健康への関心が高まり、老年助浴員という職種の誕生に繋がったと指摘している。 「これは実践の中で少しずつ標準化されていくプロセスです」と北京市の家政会社の責任者である郁(Yu)さんは話す。当初、会社は助浴を独立した業務とはしていなかったが、顧客のニーズに応えるため、専門的な設備を導入し、従業員に操作のトレーニングを行った。 多くの老年助浴員は、この職業が「技術だけでなく、コミュニケーションも重要」であると感じている。2021年末、孔丹丹(Kong Dandan)さんは山東省(Shandong)煙台市(Yantai)で介護サービス会社を設立し、要介護の高齢者に特化した助浴サービスを提供している。「要介護の高齢者はは身体を露出することに対して恥ずかしさを感じやすい」と話し、助浴員は技術だけでなく、相手の気持ちに寄り添いながらサービスを提供することが求められると述べている。 ■従業者はさらなる支援を期待 孔丹丹さんによると、助浴サービスの需要は年々増えており、「2022年には月に10件の注文でしたが、2023年には30~50件、今年はすでに100件を超えました」と述べている。それでも料金は1回298元(約6084円)から358元(約7309円)と変わらないそうだ。 郁さんは、「料金は変わりませんが、一部の家庭では400元(約8166円)の費用を躊躇することもあります」と話し、助浴員の給与が上がっている中で、収入を増やすためには件数を増やすしかないと述べている。 蘇教授は、助浴員の新しい職種登録が、家政サービス業界の従業者に新たな雇用の可能性をもたらしているが、この職種に多くの人びとを引き付けるには、業界の発展が鍵になると指摘している。また、助浴サービスと長期介護保険を連携させ、家庭の負担を軽減し、介護職の収入を保証する方法を模索すべきだと提案している。また、助浴員は新たな職種登録を機に、さらに多様な介護スキルを磨き、自身の雇用機会を広げるべきだと述べている。(c)東方新報/AFPBB News ※「東方新報」は、1995年に日本で創刊された中国語の新聞です。