能登半島地震による経済損失について考える
東日本大震災との経済損失の違い
上記の試算は、住宅の被害に基づいて被害額の規模を大まかに想定したものであり、現時点での暫定的なものでしかない。今後得られる情報により、試算値は大きく修正され得るだろう。 また上記の推計は、資本ストック毀損額の推計であり、フローの経済活動を示すGDPへの影響を試算したものではない点に留意したい。フローの経済活動への打撃という観点からは、能登半島地震の影響は、敢えて言えば、東日本大震災よりも阪神大震災に近いと考えることができるだろう。建物の被害は住宅が中心であり、工場及びそのサプライチェーンへの影響は比較的小さいと考えられるからだ。 その結果、自動車部品の供給が停止し、全国的に自動車生産に甚大な被害が生じた東日本大震災のようなことは生じないだろう。さらに東日本大震災では福島第1原子力発電所事故により電力供給に大きな制約が生じ、それが経済活動に打撃を与えたが、そうしたことは能登半島地震では生じない。 これらの点を踏まえると、能登半島地震の経済的な損失、および経済活動への悪影響は、東日本大震災と比べるとかなり小さい可能性が高いと考えられる。 木内登英(野村総合研究所 エグゼクティブ・エコノミスト) --- この記事は、NRIウェブサイトの【木内登英のGlobal Economy & Policy Insight】(https://www.nri.com/jp/knowledge/blog)に掲載されたものです。
木内 登英