“事故物件に住み続ける”芸人が語る、心霊スポットであった実体験「深夜1時すぎ、ひとりで真っ暗な山道を歩いていると…」
夜の間に食べ物がなくなる現象の正体
――ご著書の『恐い食べ物』では、食べ物にまつわる怖い話がいろいろ出てきますが、タニシさん自身の、眠っている間に何かを食べている話が気になりました。「寝ている間、僕は僕じゃない」という、出だしから引き込まれてしまいました。 松原:ええ。1軒目の事故物件でのことです。前の晩に買っていたアーモンドチョコが、翌日朝には、パッケージが破られ空っぽになっているというのが、しばしばありました。もともと霊現象を撮るため、定点カメラを夜通しオンにしていたので、それを再生しました。そこには、自分が起きあがって、コンビニの袋を漁ってチョコを食べている姿が映っていました。 睡眠専門のクリニックで診てもらうと、睡眠関連摂食障害かレム睡眠行動障害か、判然とはしないけれども、そういった病状だろうと言われました。要するに、お医者さんもはっきりとは、わからない。症状を抑える薬を、とりあえず処方してもらいました。 不思議なのは、住んだ事故物件によって、寝ながら食べるものが変わることです。最初は、アーモンドチョコでしたが、別の物件ではポテロングだったり、ぬれおかきだったり……。今はもっぱらヨーグルトばかり食べています。もしかすると、事故物件に以前住んでいた人の好物が、霊的に影響しているのかなとも推測しますが。
呪われている踏切で判明した事実
――最新作の『恐い怪談』には、100話もの実話怪談が掲載されていますが、その一つを紹介いただけますか? 松原:広島に住んでいるOさんから聞いた話です。家の近所に踏切があって、そこでは人身事故が妙に多いのですね。踏切を渡ろうとしたら、地面から手が出てきて足を引っ張るといった噂もありました。 Oさんが高校生の頃、知り合いの兄が、その踏切で電車に轢かれて亡くなるのです。自ら飛び込んでの自殺だったようです。あの踏切は、やはり呪われているのではと思い、その記憶が焼き付いたそうです。それから、歳月が経って大人になったOさんが、踏切近くの食堂でご飯を食べていたときのことです。 常連のお客さんが食堂の女将さんと、踏切について喋っているのが耳に入ります。「今日も電車が止まっているみたいだね。ここはよく人身事故があるわね」という世間話のノリです。お客さんが、「昔そこで高校生の男の子が自殺して」と言ったら、女将さんが「あれ自殺じゃないよ」って言うのです。Oさんは、思わず聞き耳をたてました。 「私、見たのよ。男の子が、急いでいたのか遮断機をまたいで向こうに渡ろうとしたのを。でも、途中で線路の上に、急にバタッと倒れたんです。倒れたまま、足をバタバタさせるんです。そのまま起き上がることもなく、電車に轢かれてしまいました。自殺だったら足をバタバタさせないでしょう」 すごく恐いわけではないですが、この話が、自分としては印象に残っています。 <取材・文/鈴木拓也> 【松原タニシ】 1982年4月28日生まれ。兵庫県神戸市出身。松竹芸能所属のピン芸人。現在は「事故物件住みます芸人」として活動。2012年よりテレビ番組「北野誠のおまえら行くな。」(エンタメ~テレ)の企画により大阪で事故物件に住みはじめ、これまでに17軒の事故物件に住む。ラジオ関西「松原タニシの生きる」、MBSラジオ「松原タニシの恐味津々」、CBCラジオ「北野誠のズバリ」などレギュラー出演中。最新の著書は『恐い怪談』(二見書房)。 X:@tanishisuki Instagram:@tanishi_m YouTube:「松原タニシch」 【鈴木拓也】 ライター、写真家、ボードゲームクリエイター。ちょっとユニークな職業人生を送る人々が目下の関心領域。そのほか、歴史、アート、健康、仕事術、トラベルなど興味の対象は幅広く、記事として書く分野は多岐にわたる。Instagram:@happysuzuki
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