経団連十倉会長、今の円安は行き過ぎ-介入は政府・日銀が適切に判断
(ブルームバーグ): 経団連の十倉雅和会長(住友化学会長)は23日、経済のファンダメンタルズ(基礎的諸条件)を踏まえれば、現在の円安は行き過ぎだとの考えを示した。
十倉会長は都内で開いた定例記者会見で、過去にも政府・日銀は行き過ぎた円安には介入した経緯があるとし、口先介入か実弾で行うかも含めて「適切に判断されると思う」と語った。一方で、日米の金利差などさまざまな情報を踏まえて投機的な動きになっている側面もあり、「短期で見て、どうやったら解決できるかというのはなかなか出てこない」とした上で、中長期的には購買力平価を反映した水準に収束するのではないかとも述べた。
米連邦準備制度理事会(FRB)による早期の利上げ観測が後退する中、為替市場では日米金利差を意識した円安の流れが続いており、23日には一時1ドル154円85銭と約34年ぶりの安値を付けた。円安は輸出企業の業績を押し上げる一方、原材料などを輸入する内需型企業のコスト上昇要因となることから財界からは過度な円安に対する懸念の声が上がっている。
特に中小企業では原材料価格や人件費などのコスト上昇分の価格転嫁が十分に進んでおらず、物価高と円安のダブルパンチで倒産に追い込まれる企業も少なくない。中小企業が多く加盟する日本商工会議所の小林健会頭は今月開いた会見で、円安に対する懸念を示し、他国との協調介入を含めて考えてもらいたいと発言した。
日本政府などによるけん制の動きも活発化しており、市場では介入に対する警戒感が高まっている。主要7カ国(G7)は17日に開いた財務相・中央銀行総裁会議で、為替の過度な変動は経済に悪影響を与えるとしたコミットメントを共同声明で再確認した。また、日米韓の財務相の共同声明には、急速な円安とウォン安に関する懸念を認識するなどとする文言が盛り込まれた。
鈴木俊一財務相は23日午前の参院財政金融委員会で、米ワシントンで開かれた一連の会議で為替の急激な変動を懸念する考えを確認したことから、介入を念頭に「適切な対応につながる環境が整った」との認識を示した。